研究課題/領域番号 |
16H02918
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研究機関 | 帝塚山大学 |
研究代表者 |
川口 洋 帝塚山大学, 文学部, 教授 (80224749)
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研究分担者 |
加藤 常員 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 准教授 (50202015)
原 正一郎 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (50218616)
関野 樹 国際日本文化研究センター, 総合情報発信室, 教授 (70353448)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 歴史GIS / 時空間分析 / 古文書画像データベース / 天然痘 / 種痘 / 感染症 / 府県統計書 / 近代移行期 |
研究実績の概要 |
本研究では、種痘の普及にともなう天然痘死亡率の低下を主局面とする感染症による死亡構造の変化を分析するため、「府縣統計書」を入力資料とする「19世紀の日本における感染症流行分析システム」を開発して、既開発の「江戸時代における人口分析システム(DANJURO)」に統合する。天然痘については、DANJUROを構成する「種痘人取調書上帳」分析システムから推計できる1850-1875年の分析結果と接続させて、種痘の普及にともない天然痘罹患率・死亡率が激減した時期を特定する。 平成30年度には、陸奥国会津郡福米沢村常楽院と同国同郡金井沢村南泉寺の「過去帳」、および金井沢村の1坪から収穫できた籾の収量を150年以上にわたって記録した「作毛位付帳」などを写真撮影した。両史料を比較検討することにより、凶作と連動しない天然痘を含む感染症の流行にともなう死亡危機を抽出する見通しができた。両寺院の「過去帳」は、令和元年度に、DANJUROを構成する「過去帳」古文書画像データベースに追加登録する計画である。 「種痘人取調書上帳」分析プログラムと「種痘人取調書上帳」時空間分析プログラムから出力できる指標を充実させた。その結果、「種痘人取調書上帳」分析プログラムを利用して38項目の人口学的指標、「種痘人取調書上帳」時空間分析プログラムを利用して18項目の指標を本システム利用者側のPCに表示することができる。 研究成果を連合王国Belfast市で開催されたThe Twelfth European Social Science History Conference 2018、明海大学で開催された日本人口学会学会、ポーランドのWarsaw市で開催されたInternational Conference of Historical Geographers 2018、奈良大学で開催された人文地理学会などで報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「種痘人取調書上帳」分析システム、「幕末維新期人口史料」分析システムの開発は、順調に進み、1850-1875の旧足柄県下における天然痘罹患率・死亡率、初種接種率、初種接種年齢などの推計が可能となった。また、奥会津地方の寺院「過去帳」を写真撮影することができた。 一方、「府県統計書・衛生統計」データベース・分析システムの構築がやや遅れている。明治時代中期に当たる1880年-1900年には、郡区の統合、合併、境界変更が頻発している。そのため、どのようにデータ設計をすれば、歴史GISを構築する際、郡区の境界変更を時空間表現できるのか試行錯誤中である。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年には、以下の点について研究開発を進める計画である。 1.感染症流行を時空間分析する歴史GISの開発とシステムの移行:「府縣統計書・衛生統計」データベースから求めた感染症罹患率・死亡率・致命率、明治初期「戸籍」と「種痘人取調書上帳」から推計できる天然痘罹患率・死亡率などにもとづいて、19世紀における感染症による死亡構造の地域差と時系列変化を分析する歴史GISを構築する。「19世紀の日本における感染症流行分析システム」を「江戸時代における人口分析システム(DANJURO ver.5.0)」と統合して、DANJURO ver.6.0を構築して試験運用を始める。 2.「種痘人取調書上帳」分析システムの拡充:DANJUROを構成する「種痘人取調書上帳」分析システムの分析プログラム・時空間分析プログラム・ライフパス分析プログラムの機能を強化する。 3.データベースの規模拡大:「府縣統計書・衛生統計」データベースに、静岡県のデータをに追加登録する。平成30年度に写真撮影・データ入力した陸奥国会津郡福米沢村常楽院と陸奥国会津郡金井沢村南泉寺の「過去帳」を「過去帳」古文書画像データベースの規模を拡大する。会津郡黒谷村瀧泉寺の「過去帳」を写真撮影・入力を行う。 4.研究成果の発表:2019年6月に香川大学で開催される日本人口学会大会で企画セッションを組織する。2020年3月にライデン市で開催されるEuropean Social Science History Conference 2020、パリ市のEcole des Hautes Etudesen Sciences Socialesが開くSolvi SOGNER WORKSHOP 2020で研究成果を報告する。「種痘人取調書上帳」分析システムに関する論文を執筆し、学会誌に投稿する。
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備考 |
「宗門改帳」分析システム、「過去帳」分析システム、「幕末維新期人口史料」分析システム、および本科研費の補助を受けて構築中の「種痘人取調書上帳」分析システムなどから構成されている。「種痘人取調書上帳」分析システムは、古文書画像データベース、分析プログラム、時空間分析プログラム、ライフパス分析プログラムから構成されている。
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