研究課題/領域番号 |
16H02925
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
高田 秀志 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (30378830)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プログラミング教育 / 帰納学習 / 協調学習 / ビジュアルプログラミング環境 |
研究実績の概要 |
小学生を対象として行うプログラミングを通した学習活動において、ビジュアルプログラミング環境を用いた協調学習環境について研究を行っている。本研究においては、プログラミングの概念を帰納的に習得する学習教材の開発や、教室内で協調的にプログラミング学習に取り組めるようなシステムの開発を行い、地域の小中学校やNPO法人と連携して実施している休日のワークショップで実適用を行っている。前年度に開発した、スモールステップ化されたプログラミング課題に対して、動作検証を子ども達が相互に行うことで協調的にプログラミングを進めることができるように支援するシステムの開発と検証を通じて、プログラムの動作検証をしながら帰納的な学習が行えるような効果が確認できる一方で、あらかじめスモールステップ化されているのではなく、子ども達自身がスモールステップ化を行った上で創作活動を行えるような支援が必要であることが明らかになってきた。そこで、子ども達がグループを組み、創作課題に対して作品をローテーションしながら作成することができるようなシステムを構築し、実際のワークショップで検証を行った。これにより、他人が作ったプログラムを理解した上で、それを参考にして自身のプログラムを追加していくという過程を踏みながらプログラミングを行うことで、プログラミングの概念をより効果的に学ぶことができるようになると考えている。この成果については、今後、国内外の学会において発表を行っていく予定である。一方、前年度に開発したプログラミング作品の発表に適したプレゼンテーション支援ツールについては、国際会議において発表した。研究の推進においては、月に2度程度のプログラミングワークショップをNPO法人と連携して実施しており、本研究を通じて得た知見を有効に活用するとともに、新しい課題の発見を探求し、研究成果の社会への還元に努めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の中心課題である、例題を用いたプログラミングの過程で試行錯誤を発生させ、プログラミングに関わる知識の概念化を促すような教材の開発においては、教材をネット上に公開し、国内のプログラミング学習に関わるコミュニティ内で共有し、活用の方策を検討している。また,実際のプログラミングワークショップへの適用や評価の結果を学会発表や論文等で公表している。さらに、協調学習を支援するシステムを構築する上で基盤的な技術となる携帯端末間の情報共有環境においても、学術雑誌に新しく論文が掲載されるなど、成果を上げている。現在、NPO法人が実施しているプログラミングワークショップに加えて、滋賀県草津市や京都市の小学校とも連携体制を築いており、実際の教育現場への研究成果の展開が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度までに開発し、ネット上に暫定的に公開している帰納プログラミング学習モデルの教材について、今年度は、プログラミングを行うための概念の習得過程に応じて体系化を行うとともに、子ども達にとって親しみやすく、学習意欲が上がるようなデザイン面での工夫を行い、プログラミングワークショップや学校での授業で利用できるようにする。また、本研究で利用しているビジュアルプログラミング環境Scratchの開発者によって昨年刊行された書籍では、次世代を担う人材を育成するために必要な創造的思考スパイラル(Imagine、Create、Play、Share、Reflect)が提唱され、本研究でもこのようなスパイラルを促進するワークショップの実践事例の紹介とモデル提示を行い、様々な人々が子ども向けプログラミングワークショップを実施する場合の指針となるようにする。加えて、協調学習支援システムの構築に必要な情報共有手段等の要素技術についても、これまでの成果を総括し、様々なソフトウェアで再利用可能になるように一般化を行う。これらの成果は、国内外の学術雑誌、国際会議、国内の研究会等で発表するとともに、本研究課題の最終年度に際して、報告書としてまとめる。
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