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2019 年度 実績報告書

海洋沿岸におけるヨウ素循環の解明-有機物分解に伴うヨウ素の化学形態変化-

研究課題

研究課題/領域番号 16H02929
研究機関北海道大学

研究代表者

大木 淳之  北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (70450252)

研究分担者 野村 大樹  北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (70550739)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2021-03-31
キーワード珪藻 / ヨードエタン / アンモニア酸化
研究実績の概要

海洋観測
2019年3,4,5,6,8,10,12月,2020年2月に北海道噴火湾にて、海洋観測を実施した。海水中の有機ヨウ素化合物の濃度を測定した。これまでの観測結果も合わせて、ヨードエタンの濃度が3~6月にかけて底層と中層で増えることがわかってきた。この傾向は4年連続で確認されていることである。2019年度は、ヨードエタンの増加のあとに、水塊の入れ替わりが無いにも関わらず、6~8月にかけて減少することに着目した。ヨードエタンが水中で減少するのはアンモニア濃度が低下した直後であることが明らかになった。基礎生産により発生した有機物が分解すると、窒素態栄養塩としてアンモニアが海水に再生する。海水中のアンモニアは微生物により急速に酸化分解される。噴火湾でも、珪藻ブルームの後に海水中でアンモニア濃度が上昇して、5月頃にピークを迎えることが明らかになっている。アンモニアを酸化分解する微生物は、アンモニア酸化細菌として知られている。アンモニア酸化細菌の中には、海水中にアンモニアが枯渇するとエタンを酸化することが報告されている。噴火湾の海水中でアンモニアが枯渇した後に、アンモニア酸化細菌がヨードエタンを酸化分解した可能性が考えられた。
室内培養実験
2019年3月の珪藻ブルーム時にプランクトンネット観測を行い、珪藻懸濁物を採取した。その珪藻懸濁物を冷凍保管して、培養実験のサンプルとして用いた。珪藻懸濁物をガラスボトルに密封して低温で約1か月培養した。酸素濃度をコントロールした実験区を設けたが、無酸素、有酸素、いずれの条件でも1週間以上経過するとヨードエタンが発生することが明らかになった。特定の微生物により、珪藻懸濁物が分解、ヨードエタンが発生するという、当初の仮説では説明できない現象が捉えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ヨードエタンの発生条件について酸素濃度を調整した培養実験を行うことができた。培養実験の結果は予想に反していたが、その結果をもとに、新たな実験を行う計画(2020年度)を立てることができた。
海洋観測の結果より、有機ヨウ素分解の手がかりを得ることができたので、それを検証する実験を行う計画(2020年度)を立てることができたため。

今後の研究の推進方策

珪藻懸濁物を物理的に破砕する実験を行い、破砕直後に有機ヨウ素化合物の発生有無を調べる。珪藻懸濁物として、植物プランクトン培養により増やした生きた珪藻を用いる予定である。その生きた植物プランクトンに対して、栄養塩を枯渇した条件を課して有機ヨウ素発生の状況を調べる。本研究でも、珪藻類を増殖させて有機ヨウ素の発生を調べる実験を行ってきたが、夏季の噴火湾に増殖する渦鞭毛藻を培養対象の種に選ぶことにした。

遂行する上での問題点
渦鞭毛藻類の培養の準備を2020年3月より進めてきたが、新型コロナ感染症の拡大のため培養実験が遅れる可能性がある。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Saroma-ko Lagoon Observations for sea ice Physico-chemistry and Ecosystems 2019 (SLOPE2019)2020

    • 著者名/発表者名
      NOMURA D、WONGPAN P、TOYOTA T、TANIKAWA T、KAWAGUCHI Yusuke、ONO Takashi、ISHINO Tomomi、TOZAWA Manami、TAMURA Tetsuya P.、YABE Itsuka S.、SON Eun Yae、VIVIER Frederic、LOURENCO Antonio、LEBRUN Marion、NOSAKA Yuichi、HIRAWAKE Toru、OOKI Atsushi、AOKI Shigeru、ELSE Brent、FRIPIAT Francois、INOUE Jun、V. Martin
    • 雑誌名

      Bulletin of Glaciological Research

      巻: 38 ページ: 1~12

    • DOI

      10.5331/bgr.19R02

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Production of Dibromomethane and Changes in the Bacterial Community in Bromoform-Enriched Seawater2019

    • 著者名/発表者名
      Kataoka Takafumi、Ooki Atsushi、Nomura Daiki
    • 雑誌名

      Microbes and Environments

      巻: 34 ページ: 215~218

    • DOI

      https://doi.org/10.1264/jsme2.ME18027

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Characterization of the Water Masses in the Shelf Region of the Bering and Chukchi Seas With Fluorescent Organic Matter2019

    • 著者名/発表者名
      Yamashita Youhei、Yagi Yuki、Ueno Hiromichi、Ooki Atsushi、Hirawake Toru
    • 雑誌名

      Journal of Geophysical Research: Oceans

      巻: 124 ページ: 7545~7556

    • DOI

      10.1029/2019JC015476

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Annual and seasonal changes in the assemblage of planktonic copepods and appendicularians in Funka Bay before and after intrusion of Coastal Oyashio Water2019

    • 著者名/発表者名
      Hideyoshi Yamaoka, Tetsuya Takatsu, Kota Suzuki, Naoto Kobayashi, Atsushi Ooki, Mitsuhiro Nakaya
    • 雑誌名

      FISHERIES SCIENCE

      巻: 85 ページ: 1077-1087

    • DOI

      10.1007/s12562-019-01345-9

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Isoprene production in seawater of Funka Bay, Hokkaido, Japan2019

    • 著者名/発表者名
      Atsushi Ooki, Ryuta Shida, Masashi Otsu, Hiroji Onishi, Naoto Kobayashi, Takahiro Iida, Daiki Nomura, Kota Suzuki, Hideyoshi Yamaoka, Tetsuya Takatsu
    • 雑誌名

      Journal of Oceanography

      巻: 75 ページ: 485-501

    • DOI

      doi.org/10.1007/s10872-019-00517-6

    • 査読あり
  • [学会発表] 北海道噴火湾における海洋堆積物中揮発性有機ヨウ素化合物の時系列観測2019

    • 著者名/発表者名
      南川 佳太,伊藤 駿,孟 繁興,宮下 直也,大木 淳之
    • 学会等名
      日本地球化学会
  • [学会発表] 北海道噴火湾における堆積物中の硫化物及び栄養塩の時系列観測2019

    • 著者名/発表者名
      伊藤 駿, 南川 佳太,伊藤 駿,孟 繁興,宮下 直也,大木 淳之
    • 学会等名
      日本地球化学会
  • [学会発表] Isoprene productions in seawater of the Funka Bay, Hokkaido, Japan2019

    • 著者名/発表者名
      Atsushi Ooki, Ryuta Shida, Masashi Otsu, Hiroji Onishi, Naoto Kobayashi, Takahiro Iida, Daiki Nomura, Kota Suzuki, Hideyoshi Yamaoka, Tetsuya Takatsu
    • 学会等名
      SOLAS open conferrence

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公開日: 2021-01-27  

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