研究課題/領域番号 |
16H02930
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山下 洋平 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (50432224)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 海洋科学 / 生物地球化学 / 溶存有機物 / 燃焼起源有機物 |
研究実績の概要 |
バイオマスや化石燃料の燃焼に伴い生成する燃焼起源有機物(PyOM)は、地球表層に広く分布し、還元型炭素プールの重要な構成成分であると考えられている。近年、地球表層における3大還元型炭素プールの一つである海洋溶存有機物中に河川及び大気由来と考えられるPyOMが存在する事が確認された。しかし、研究例が極めて少なく、海洋溶存有機物画分のPyOM動態および存在量は明らかでない。そこで、本研究では、海洋溶存有機物画分のPyOMの広域分布を示し、その動態および存在量を明らかにする事を目的とした。 平成29年度は以下の研究を実施した。 ①窒素雰囲気下において様々な温度で植物片を不完全燃焼させる事により燃焼起源有機物を生成し、それらのベンゼンポリカルボン酸組成を評価した。その結果、燃焼温度が高くなるにつれ、カルボキシル基を5つもしくは6つ有するベンゼンポリカルボン酸の割合が増加する事が分かった。これらの結果より、ベンゼンポリカルボン酸組成を用いる事により、PyOMの起源を評価できる事が明らかとなった。 ②南北太平洋において採取した試料の溶存有機物画分におけるPyOM(溶存PyOM)を分析し、その南北断面分布を明らかにした。また、その溶存PyOMの存在量および組成を決定づける要因に関して予備的な解析を開始した。 ③東京大学大気海洋研究所/海洋研究開発機構所属の白鳳丸航海(KH-17-4次航海)に参加し、北太平洋における溶存PyOMの東西断面分布を評価可能な試料の採取および前処理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度までに以下の事を実施する事ができた為、研究はおおむね順調に進展しているといえる。 ①溶存PyOMの分析法を確立し、それを含む論文が国際誌に受理・出版された。 ②燃焼温度に関連するPyOM組成の違いから、PyOMの起源を評価可能な事を示した。 ③太平洋における溶存PyOMの南北断面分布を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、北太平洋における溶存PyOMの東西断面分布を明らかにする。また、これまでに試料を採取できていない北西部北太平洋およびベーリング海において試料採取を実施し、溶存PyOMの分析を行う。得られる溶存PyOMの分布、それに対応する海洋物理および化学パラメータの分布との比較などから、海洋溶存有機物画分のPyOMの動態および存在量を明らかにする。
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