研究課題/領域番号 |
16H02934
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
古内 正美 金沢大学, 環境デザイン学系, 教授 (70165463)
|
研究分担者 |
畑 光彦 金沢大学, 環境デザイン学系, 准教授 (00334756)
瀬戸 章文 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (40344155)
那須 正夫 大阪大谷大学, 薬学部, 客員教授 (90218040)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 気中微生物 / バイオエアロゾル / 蛍光色素 / 染色時間 / 気中染色 / エレクトロスプレー |
研究実績の概要 |
本研究は,気中微生物を浮遊状態で蛍光染色する、これまでにない新しい技術を提案・確立し,これと,液中サンプル分析に確立されている微生物が発する蛍光を直接検出して微生物特有の情報を取り出せるフローサイトメトリー技術の気中微生物への応用を組み合わせることで,リアルタイムで気中微生物情報を獲得できるエアロゾル・フローサイトメトリーをひとつのシステムで実現しようとするものである。初年度の検討内容・実績は以下のとおりである。 1)モデル微生物を用いた染色特性評価:DAPI、FITC、オーラミンでイースト菌を蛍光染色する際の蛍光反応の短時間時間特性を、蛍光顕微鏡による画像観察と蛍光分光光度計で計測される強度から評価した。この結果、蛍光色素濃度に応じて10-100秒の短時間で染色イースト菌からの蛍光強度が飽和し、エアロゾル染色で想定される現実的な気中保持時間で染色可能なこと、オーラミンの染色速度が最も早いことなどを確認した。2)エレクトロスプレーによる蛍光色素ミスト生成特性の評価:現有エレクトロスプレーを用いて,種々の生成条件(電圧等運転条件,蛍光染料溶液濃度,溶媒種類)で蛍光色素溶液ミストを生成し,ミスト径分布,荷電量,蛍光色素量と生成ミスト中色素濃度などの蛍光色素粒子の状態を評価し,安定的に発生できる条件を確認した。また、エレクトロスプレー、蛍光色素ミストの噴霧生成装置、微生物エアロゾル発生器を試作し、安定操作条件を明らかにした。3)蛍光色素ミストによるモデル微生物エアロゾルを用いた染色特性の評価:2)で試作・調整した噴霧生成装置で生成した蛍光色素ミストとイースト菌エアロゾルを気相混合した後、純水を満たしたインピンジャーで捕集・染色停止することで、エアロゾル状態での染色特性を評価した。4)エアロゾル・フローサイトメトリー用フローセルの最適設計:構造、寸法、流量条件について議論・検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セル設置状態で試料液を混合できる分光光度計を用いることで、蛍光染色液との接触後の微生物(イースト菌)蛍光染色時間特性に関して、100秒以下の時間域で秒単位の精度で評価できた。現在測定を継続しており、蛍光色素種類、濃度条件に関して有効なデータが蓄積された。エレクトロスプレーによる蛍光色素粒子の生成については、市販の同装置を用いて安定した発生条件(色素濃度、発生粒子径およびその分布形状)を明らかにするとともに、この条件を参考にして、試作エレクトロスプレーを設計・試作した。データの蓄積に関しては蛍光色素種類に関して当初の計画より若干少ないが、ほぼ目的を達成している。さらに、ネブライザーを用いたミクロンオーダーの色素液滴を生成するための操作条件を得ることが可能となり、この装置で発生した色素液滴とイースト菌エアロゾルを混合して、混合エアロゾルを捕集すると同時に染色停止できる方法を新たに考案したうえで、エアロゾル染色が確認できるデータを採取しており、今後のデータ採取の基礎を整えることができたと言える。セル設計に関しては基本的構成と操作条件を決定できたので、次年度に本格化する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の29年度計画に加えて、前年度の検討項目の内重要な時間特性データを微生物・蛍光色素種類を追加して継続的に蓄積する。測定データ再現性に分光光度計セル内の試料液の混合状態が影響する可能性があるので、測定セルの小型化、攪拌装置の付与なども検討したうえで、慎重にデータを蓄積する。また得られた結果を原著論文・学会等で公表していく。エアロゾル染色特性に関しても継続して、蛍光色素ミストとの混合、エレクトロスプレー生成色素エアロゾルとの混合・加湿時の染色特性を評価する。各エアロゾルの安定生成はデータの信頼性に決定的に重要であるので、一層の安定性を確保する工夫を行ってエアロゾル染色特性を慎重に評価する。これらの結果をフローセルの詳細設計に反映させるとともに、原著論文・学会等で公表していく。これらと合わせて29年度計画を当初予定通りに実施する。
|