研究課題/領域番号 |
16H02935
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
岩田 智也 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (50362075)
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研究分担者 |
篠原 隆一郎 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主任研究員 (00610817)
小島 久弥 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (70400009)
田中 健太 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (80512467)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | メタン / 湖沼 / 好気的メタン生成 / NMR / 微生物群集 / ホスホン酸 |
研究実績の概要 |
平成30年度は「サブテーマ3)ホスホン酸代謝を担う浮遊性細菌の時空間分布解明」、「サブテーマ4)リン飢餓状態における微生物細胞内のホスホン酸生成過程」、「サブテーマ5)栄養塩バランスの異なる湖水における好気的メタン生成カイネティクスの定式化」に関する研究を行った。
次世代シークエンスによる群集解析の結果、亜表層に顕著なメタン極大が出現する深い湖においては、メタン極大が発達する水温躍層付近にシアノバクテリアであるSynechococcusが特異的に多く分布していることが明らかとなった。SynechococcusはC-Pリアーゼを有すると考えられることやメタン生成能が申請者らの先行研究で確認されていることから、メタン極大の形成に大きく寄与しているものと考えられた。サブテーマ2である微生物細胞内のホスホン酸生成については、湖水から大量捕集した微生物試料について実験条件の検討を行い、解析の準備を完了した。また、培養細胞では実験場件下で特定の微生物が細胞内にホスホン酸を生成・蓄積することが確認された。この微生物については、既知のホスホン酸生合成経路とは異なる反応によるホスホン酸を生成している可能性が示唆された。サブテーマ3については、湖水へのホスホン酸添加実験から、夏季に強いリン飢餓状態となるメタン極大層付近においてC-Pリアーゼ活性が認められた。さらに、カイネティクスの推定も試み、ごく微量ながら湖水中にホスホン酸が存在している可能性を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの成果により、湖沼の湖盆形状と浮遊性微生物の栄養飢餓状態がメタンの亜表層極大形成に強く影響することを示すことができた。また、このメタン生成反応には貧栄養環境で優占するシアノバクテリアのSynechococcusが関与しており、細胞内または湖水中に存在している微量のホスホン酸を基質にC-Pリアーゼによりメタンを生成しているものと考えられる。これらの結果は、当初の仮説を概ね支持するものであり、学術的にもきわめて新規性の高い重要な知見である。ホスホン酸のスペシエーションや存在形態、微生物のゲノム解析についても進展しており、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、研究実績に記載したサブテーマ3、4、5の研究を継続し、残された試料分析とデータ解析および成果の公表に注力する。とくに、微生物解析においては、多様な系統の分類群がメタン生成に関与している可能性も示唆されていることから、代表者と協力者が集まって議論を行うことで、解析方針の検討を行う。また、好気的メタン生成カイネティクスの定式化についてはデータが不足していることから、野外調査を複数回行い、より精度の高いデータをもとに解析を進める予定である。現在、これまでの成果を複数の論文にまとめて投稿しているところであるが、さらにデータ解析を進めることで、新たな投稿原稿の作成を行う。すべての成果を統合し、本年度に湖の好気環境におけるメタン動態に影響を及ぼす要因について整理を行い、報告書にまとめる予定である。
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