研究課題
PM2.5などのエアロゾルの健康影響は、単に質量濃度だけではなく、その化学成分が重要であると考えられるので、簡便かつリアルタイムでの組成測定装置が求められている。現状では、大気エアロゾルの化学成分は、フィルタにエアロゾルを捕集し,そのフィルタを直接または前処理して分析装置に導入して測定されている。こうした分析では,ある程度の成分量を集めなければ分析できないので,一定のフィルタ捕集時間(たとえば24時間)が必要で、集めたものをさらにガスクロマトグラフや液体クロマトグラフ、質量分析などの実験室の大きな計測装置で分析することが行われている。これらの分析には1日-数日かかりリアルタイムの計測ではない。そこで、エアロゾル1粒の光散乱の空間角度分布を一度に測定する装置を開発し、様々な組成の標準粒子を発生させて、開発した装置を用いて粒子特有の光散乱特性パターンに関するデータベースを蓄積している。光散乱特性の情報はエアロゾルの気候影響の解析においても重要である。エアロゾルの個別粒子の光散乱角度分布測定装置を改良して、コンパクトでローコストな装置を開発し、より精密なPM2.5の測定を可能にした。大気中にどのような種類、形状、組成のエアロゾルが主要に存在するかをリアルタイムで検知し、適切な対策ができるシステムを開発している。また、開発した装置を用いて、実験室で典型的な二次有機エアロゾル粒子、砂塵などの鉱物粒子、硫酸塩粒子など、様々な組成の粒子や、それらが内部混合した粒子の光散乱特性や複素屈折率などを測定して、データベース化している。
2: おおむね順調に進展している
粒子1粒ずつの個別粒子の光散乱角度分布が測定可能な角度分解型ネフェロメータのハードおよび解析ソフトを拡充した。それを用いた室内実験により、種々の粒子の光散乱のデータベースを作成している。また、実際の大気中のエアロゾル粒子を計測する。本装置は、直線偏光した532nmのYAGレーザーを光源としており、装置の中心点でエアロゾルによる光散乱が起き、光散乱を42個の受光器で検知する。受光器はレーザー光源の偏光に対して垂直な面と平行な面の2つの面に配置し、約8.3度ごとの角度分解能で光散乱角度分布を測定することができるものを作成した。受光器は直径4mmの受光面をもつアンプ付きフォトダイオードであり、エアロゾル光散乱点から100 mmの距離に配置する。42個の受光器の出力を高速のA/Dコンバータで処理し、データ処理用のパソコンに送る。試料気体中の1つの粒子の散乱信号を分離できるようになっている。開発した装置で実際の大気のエアロゾルの個々の粒子の光散乱角度分布を測定して、その粒子のサイズ、形状、屈折率が計測可能である。エアロゾル質量分析計、あるいは従来型のハイボリュームサンプラと実験室での化学分析作業などを同時に行って、存在するエアロゾルの組成を正確にモニターしながら、組成と光散乱特性の対応を検討している。また、エアロゾルをサンプリングして電子顕微鏡でひと粒ずつの画像を見ながら光散乱特性と比較をしている。
PM2.5などのエアロゾルの健康影響は、単に質量濃度だけではなく、その化学成分が重要であると考えられるので、簡便かつリアルタイムでの組成測定装置が求められている。エアロゾル1粒の光散乱の空間角度分布を一度に測定する装置をより改良し、様々な組成の標準粒子を発生させて、開発した装置を用いて粒子特有の光散乱特性パターンに関するデータベースを蓄積する。光散乱特性の情報はエアロゾルの気候影響の解析においても重要である。エアロゾルの個別粒子の光散乱角度分布測定装置を改良して、コンパクトでローコストな装置を開発し、より精密な光散乱特性の測定と組成の検知を可能にする。大気中にどのような種類、形状、組成のエアロゾルが主要に存在するかをリアルタイムで検知し、適切な対策ができるシステムを開発する。光散乱の角度分布は、Mie 散乱理論に基づく理論的な角度分布と比較する。開発している装置では、粒子の光散乱点が一点ではなくてレーザー光線の光路に沿った直線上にあること、また、受光器は受光面の面積を持っていることから、1点散乱の1立体角度の理想的なMie散乱角度分布からずれる。この補正を、モンテカルロシミュレーションにより、散乱点の大きさや光電面の大きさを取り込み、試作している角度分解ネフェロメータに合わせた理論散乱角度分布を計算する。この装置で大気中のPM2.5粒子の光学特性の測定と化学成分の推定をするが、PM2.5の問題が深刻になっているベトナム、インド、インドネシア、マレーシア、モンゴル、タイなどの発展途上国での計測が重要である。そのため、設置の準備のため発展途上国の調査を行う。
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