研究課題/領域番号 |
16H02942
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
張 代洲 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (90322726)
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研究分担者 |
河本 和明 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (10353450)
早坂 忠裕 東北大学, 理学研究科, 教授 (40202262)
柴田 隆 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (70167443)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 環境変動 / 広域大気汚染 / ヘイズ粒子 / 東アジア |
研究実績の概要 |
平成30年度では,昨年度の続きとして,常時観測に加えて平成30年5月と平成31年3月に 研究代表者のグループは熊本県天草西海岸で,海外協力研究者は中国河北省邯鄲市,河南省鄭州市,沿岸都市青島市及び東シナ海上で,集中観測をそれぞれ行なった.同時に衛星データと局域モデルの計算と予報のデータも収集した.新しいサンプルとデータの分析とデータの解析も行なった. 主な研究結果は次のとおりである:(1)人為大気汚染の卓越時に,エアロゾル粒子による光散乱強度は粒子の成長に左右される.その成長を引き起こす要因は,二次エアロゾル成分の生成と水蒸気の凝結である.(2)天草西岸の観測では,2018年春季は2017年春季より粒径が大きい黄砂粒子が多数飛来しており,エアロゾル粒子の光吸収と光散乱が共に強かった.(3)スス粒子が飛来し,かつ大気の相対湿度が60%以上の時に,単位体積の光散乱はスス粒子の飛来しない時に比べ非常に高くなり,特に体積濃度が低いほど,単位体積の光後方散乱が強かった.(4)人為大気汚染物質の一次粒子が直接影響する中国の邯鄲市における浮遊粒子状物質の光散乱と光吸収は,一次粒子に支配され,二次成分の生成の貢献は小さかった.(5)青島市においては,黄砂影響の有無によりエアロゾル中の水溶性の割合が異なった.黄砂が無い時は割合が高く無機水溶性リンが多いが,黄砂時は割合が低く有機の水溶性リンの割合が高い.(6)鄭州市の観測から,二次エアロゾル成分は,ヘイズ時のPM2.5の増加の要因であった. また,学術論文の作成と投稿,学会での発表を積極的に実施した.年度中に本研究による論文が5篇(査読付き,本研究助成番号記入あり),本研究に関係した論文が5篇(査読付き,本研究助成番号記入無)国際専門雑誌に掲載された.国内学会発表は8件,国際学会発表は7件(内招待講演2件)であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成30年度の実施予定内容は,常時観測と短期集中観測の実施,サンプルの分析とデータの解析,必要に応じた研究集会の開催,学術論文の投稿と国内外学会での研究発表である.観測の実施は予定時期より多少の前後のずれはあったが,順調に実施したまたは実施している.特に,海外の研究者の協力で,計画した中国西部の西安市,華北域の邯鄲市,北京市,及び沿岸域の青島市に加えて,河南省鄭州市においても様々な大気汚染状況下でのサンプルと計測データを取得し,平成31年4月現在も観測を行いながら,サンプルの分析とデータの解析を行っている.また,過去のデータの解析も行い,これまでに取得したデータと合わせてとりまとめ,国内外の学会での発表の他に,学術論文として国際雑誌に投稿し,一部が既に掲載されている. また,中国チベット高原に隣接しヘイズ汚染で注目されている成都市でのヘイズの観測及びテンゲル砂漠の黄砂観測に関する調査の計画を立て,今年度中に共同的な調査研究を実施し,それらの地域の情報提供と研究成果の交流を定期的に行なうことを決めた.これらの研究活動により,本研究の今後の展開と影響および研究成果の更なる向上が期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
観測として,平成31年度の春季の常時観測を5月まで実施する.また,中国の協力研究者と連携して5月下旬に集中観測を実施する.その後,観測装置のオーバーホールと保守を行い,秋季の補足観測の準備を行う. 取得したサンプルの分析を続ける.同時に,研究分担者・連携研究者および海外協力研究者と緊密に連携をとり,データの分析と解析を推進する.国内外の研究分担者や協力者との個別の打ち合わせと検討を行い,11月前後に研究集会を開き,結果の検討およびとりまとめを行い,本研究結果と研究ネットワークの更なる発展について議論し,計画を立てる.また,学術論文原稿を作成し積極的に投稿する.国内外の学会に参加し,本研究の計画および成果を積極的に発表する.
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備考 |
本研究における観測活動、国際交流、学会発表、論文発表は随時に知らせている.
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