研究課題/領域番号 |
16H02943
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
鏡味 麻衣子 東邦大学, 理学部, 准教授 (20449250)
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研究分担者 |
出川 洋介 筑波大学, 生命環境系, 助教 (00311431)
朴 虎東 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (20262686)
千賀 有希子 東邦大学, 理学部, 講師 (30434210)
辻 彰洋 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (40356267)
伴 修平 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (50238234)
田辺 雄彦 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (80391126)
細井 祥子 (田辺祥子) 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (80423226)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 生物多様性 / 水圏 / 微生物 / 環境変動 / 病原菌 |
研究実績の概要 |
植物プランクトンには、ウィルスやバクテリア(細菌類)、菌類、原生生物など様々な生物が寄生するが、なかでもツボカビ門に属する菌類は湖沼生態系において重要である事が明らかになりつつある。本研究では、植物プランクトンとそれに寄生する多様な菌類に焦点をあて、様々な湖沼における両者の対応関係(宿主特異性)を遺伝子レベルで網羅的に把握するとともに、宿主寄生者関係に影響する環境要因を明らかにすることを目的とした。 琵琶湖や印旛沼、Lake Stechlin(ドイツ)から湖水を採取し、菌類と植物プランクトンの遺伝子レベルでの対応関係(宿主特異性)をSingle Cell PCR法と次世代シークエンス解析により網羅的に解析した。その結果、いずれの湖沼にも多様な菌類が存在すること、菌類と植物プランクトンの関係は必ずしも1対1ではなく、多様な菌が一種の植物プランクトンに寄生する、もしくは一種の菌が多様な植物プランクトンに寄生するといった宿主特異性の低い菌も存在することが明らかとなった。 湖水から寄生菌類と植物プランクトンを単離し、2者系での培養を確立した。寄生した菌類の系統解析を行うと同時に、菌類の宿主選好機構を感染実験により検証した。その結果、遺伝子レベルでは明確に区別できない菌類のなかでも、宿主特異性が異なることが判明した。菌類は遊走子の状態で水中を泳ぎ特定の宿主を発見する際、植物プランクトンが細胞外に排出する特異的な溶存有機物(DOM)をたよりにしている可能性がある(走化性、ケモタクシス)。 印旛沼において、環境要因(水温、栄養塩、捕食者、植物プランクトン多様性など)と寄生率の関係を解析した結果、ツボカビの密度とワムシとの間に有意な関係性が認められた。富栄養な印旛沼では、ツボカビの遊走子を捕食できるワムシが感染症の動態に大きく影響を及ぼしている可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子解析やゲノム解析にむけて、方法の確立に難航したが、概ね解析環境が整った。今後は、確立した手法にて、試料を迅速に解析することで、研究がこれまで以上に進展すると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
野外試料の遺伝子解析により確認された宿主寄生者関係(宿主域、宿主特異性)を検証するために、単離した複数の菌類と植物プランクトンを用いて相互に感染させる実験を行う。また宿主特異性の分子メカニズムを明らかにするために、宿主特異性の異なる菌類の全ゲノムDNAの解析を試みる。 また宿主寄生者関係が環境条件により変化するか検討する。環境条件(光、水温、栄養塩濃度など)を変化させ、菌類への感染されやすさ(耐性)を具体的に検証する。同時に菌類が宿主を発見するためにたよりにしていると思われる植物プランクトンの細胞外溶存有機物(DOM)の組成や量の関係を解析する。また、植物プランクトンのうち、宿主となる種類(株)とならない種類(株)に対して、遊走子のケモタクシス(走化性)が異なるのかを、行動解析により明らかにする。遊走子の行動を観察し、感染されやすさが環境条件による物質量の変化により異なるのかを明らかにする。 湖沼での感染症動態と捕食者や環境条件との関係を明らかにするために、日本とドイツの湖沼における菌類の寄生率と環境要因との関係を解析する。時系列解析に加え、必要に応じて野外操作実験を行い、感染症動態と環境要因との関係を探る。
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