研究課題
科研費・若手研究(A)「炭酸塩の微小領域安定同位体比の新展開:環境の相対変動解析から絶対変動解析への変革」により,世界最高水準の安定同位体比分析計(IRMS)を用いた炭酸塩の超高解像度環境解析の研究基盤(MICAL3c)を確立し,複数の共同研究を伴う積極的な応用研究を開始してきた.本研究課題はその継続研究として位置づけ,(1)これまでの相対変動解析を主体とした生物源炭酸塩の安定同位体比による環境変動解析から,海洋そのものの同位体値復元に基づく絶対変動解析への変革を推進すること,そのために(2)境界領域・複合分野へ分析技術の適用範囲を広げ,特に水産学分野への展開を加速し,(3)世界唯一の分析技術に対する国内外の幅広い需要に応えるために確固 たる研究基盤を維持発展させることを本研究の目的とした.本年度の具体的な成果としては,海洋底層の絶対環境指標として有用な有孔虫種の選定をおこなうと共に,その汎用性の検証作業をおこなった.また,高解像度での環境解析を実現するために,微小領域切削技術の最適化もおこなった.さらに,炭酸塩安定同位体組成の高精度化には,周辺水の同位体組成との比較が不可欠であり,高精度分析体制の構築を継続した.また,本研究テーマでは特定の連携研究者は設定しないが,微量分析を活用した共同研究依頼をいただいている全ての外部研究者が連携研究者の位置づけをなし,外部からの来訪者ものべ80人を超えており,共同研究への応答は次年度以降の課題と言える.研究基盤の維持と質の維持向上も順調である.
2: おおむね順調に進展している
本研究テーマでは特定の連携研究者は設定しないが,微量分析を活用した共同研究依頼をいただいている全ての外部研究者が連携研究者の位置づけをなし,外部からの来訪者ものべ80人を超えており,共同研究への広がりは想定以上に加速しており,受入体制の拡充は次年度以降の課題と言える.研究基盤の維持と質の維持向上も順調であり,研究成果も着実に得ることができている.
前年度の研究内容を継続発展させ,(1)分析システムの最適化を継続する.また,高精度の微量炭酸塩安定同位体比分析を維持するため,システムの調整と消耗部品の定期交換をおこなう.開発者が責任をもって維持管理を継続することによって,分析精度の維持とデータに対する信頼保証を与えることができる.(2)微小領域の炭酸塩安定同位体分析は世界で唯一の分法であり,どのような研究対象であっても全て新しい知見につながる.そのために,分野横断的に新たな研究対象への応用を提言し,共同研究提案には積極的に協力する.浅海性石灰質生物殻や飼育魚類の微小耳石,さらには海水試料などへの応用を試み,新たな絶対環境指標の獲得をめざす.(3)これまでに新たな共同研究を複数開始しており,特に水産資源管理に関わる共同研究への技術開発や生体試料の安定同位体比分析も試みる.
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 8件、 招待講演 2件)
Analytical Chemistry
巻: 89 ページ: 4409-4412
10.1021/acs.analchem.7b00544
PalZ
巻: 90 ページ: 701-722
10.1007/s12542-016-0326-4
Paleoceanography
巻: 31 ページ: 1440-1452
0.1002/2016PA002947