今年度は、昨年度から引き続き、マレーシア半島部のパソ森林保護区のタワーサイトにおいて硫化カルボニルの観測を行った。観測にはパソ森林保護区の林床において、硫化カルボニルの大気濃度を連続的に測定したところ、夜間に低く、日中にやや高くなる日内変動が見られた。同様な変動を示した他の揮発性有機化合物との相関解析から、熱帯林では大気が清掃化した夜間に土壌などが硫化カルボニルのシンクとして働いていることが示唆された。一方、日中には活発な鉛直対流によって林床と上層の大気が混合することで林床付近の濃度が上昇したと考えられた。硫化カルボニルは概ね500~1000pptの濃度で推移したが、最大濃度は2000pptに達した。硫化カルボニルと同期したピークは二硫化炭素にも認められ、これら2つの揮発性有機化合物に共通する発生源が近傍に存在することが示唆された。
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