研究課題/領域番号 |
16H02947
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
相田 真希 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 技術主任 (90463091)
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研究分担者 |
田所 和明 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 東北区水産研究所, 主幹研究員 (70399575)
小針 統 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 准教授 (60336328)
山口 篤 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (50344495)
兵藤 不二夫 岡山大学, 異分野融合先端研究コア, 准教授 (70435535)
石井 励一郎 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 准教授 (40390710)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 海洋生態系 / 食物連鎖 / 安定同位体比 / 環境動態モデル / 物質循環 |
研究実績の概要 |
平成28年度に引き続き、北西部北太平洋域を中心に熱帯海域まで海域を拡げ、生物試料の採集および同位体分析を行った:①西部北太平洋155E線、②北部北太平洋亜寒帯海域およびベーリング海東部(①,②ともに北海道大学附属練習船おしょろ丸)、③西部北太平洋北海道沖~小笠原近海、沖縄近海~小笠原近海(白鳳丸)、④東シナ海黒潮流域および北部薩南海域・鹿児島湾(鹿児島大学付属練習船かごしま丸)、⑤九州~パラオ海嶺海域(水産研究・教育機構 蒼鷹丸)。前年度に得られた北極海チャクチ海~北西部亜熱帯海域(155E線)における動物プランクトンの炭素・窒素安定同位体比について統計的に解析した結果、生物が生息する地域に関わらず統一的な規則性があること、また、CN同位体マップ上で高緯度域、上下混合海域、窒素制限海域などの特性に区分された。これは本研究計画と当初に予想していた結果に概ね一致した。また、過去に得られた南極海の食物連鎖のCN同位体比を含め比較すると、北極海チャクチ海の炭素同位体比は南極海と同じく低い数値を示した一方で、窒素同位体比では南極海は低く、チャクチ海は高い数値を得た。今後更なる検証が必要であるが、植物プランクトンが取り込む同位体組成の違いが、結果として動物プランクトンの同位体比へ反映された為と考えた。 155E線で採集した動物プランクトン試料について、カイアシ類の口器付属肢の形態的特徴と食性、炭素・窒素安定同位体比との関係を表層~3000mに渡って検証した。その結果、500m以深では水深の影響が強く食性間ので有意な差が見られなかったものの、表層~500m間の窒素同位体比では食性(粒子食性、デトリタス食性、肉食性)を反映した形態的的特徴との関係性が見られた(本成果は査読付き国際誌に投稿中である)。本成果を国際シンポジウムで口頭発表を行い、第5回青田昌秋賞を受賞した(米田ら、2018)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していた観測調査は予定通り実施できた。本年度は動物プランクトン試料の他に、日本近海を回遊しているマイワシ、カタクチイワシについて、北海道沖から鹿児島沖まで収集し、同位体分析を行った。これにより、日本近海における低次から高次までの食物連鎖試料を概ね揃えることが出来た。更に、過去に採集した動物プランクトン試料を用いて、表層から1000m深度までの放射性炭素同位体比を実施し、餌起源および水系の差異の検証を実施した。また、数値モデルにおいては、代謝系のダイナミクスを理解するために代謝理論モデルの構築を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度(次年度)は本研究の最終年度にあたる。調査観測としては、ベーリング海東部及び西部を予定している。また、これまでに採集・種分類を実施した生物試料(動物プランクトン、マイワシ・カタクチイワシなど)の炭素・窒素安定同位体比分析を引き続き実施する。また生物試料と合わせて採水した海水試料の15N-NO3分析を行う。これにより、これまでに得られた動植物プランクトンから魚に至る生物の同位体比データから、炭素-窒素安定同位体比と海域別の食物連鎖の関係式を求める。更に、動物プランクトンの放射性炭素同位体比データ、海洋低次生態系モデルや代謝理論同位体モデルなどを組み合わせることによって、海域を跨いだ空間スケールで、統一的に食物連鎖を評価することが可能となる統計的解析手法を纏める。
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