研究課題/領域番号 |
16H02948
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
小林 秀樹 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球表層物質循環研究分野, 主任研究員 (10392961)
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研究分担者 |
市井 和仁 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球表層物質循環研究分野, 主任研究員 (50345865)
加藤 知道 北海道大学, 農学研究院, 助教 (60392958)
野田 響 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 研究員 (60467214)
楊 偉 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 特任助教 (80725044)
近藤 雅征 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球表層物質循環研究分野, 特任技術主事 (40754346)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リモートセンシング / 光合成 / 放射伝達モデル |
研究実績の概要 |
クロロフィル蛍光を計算する個葉レベルの汎用モデルであるSCOPEモデルの感度解析でモデルの挙動を明らかにし、各植生タイプの入力パラメータレンジを決定して個葉レベルのクロロフィル蛍光モデルの特性を評価した。また、現場レベルでクロロフィル蛍光を評価するために、小型分光器Ocean Optics製のHR4000と光スイッチ(LEONI)、ノートパソコンを結合しOctave(オクターブ)のスクリプトで制御する新しい分光計測システムを構築しアラスカのクロトウヒ疎林に設置した。また、国内においても設置に向けた試験観測を実施した。また、樹冠レベルのクロロフィル蛍光を計算するために必要となる樹木構造のモデルを検証するために、国内複数サイト(北海道大学・苫小牧研究林、富士北麓フラックスリサーチサイト)のLiDARデータを取得し、樹木構造モデルの検証を行った。また、各観測サイトの生物季節・分光観測ネットワー ク(Phenological Eye Network)やフラックスデータからクロロフィル蛍光と光合成関係が入射光合成有効放射量や気温の変化によりどのように変化するかについて調べ、気温応じた光-クロロフィル蛍光関係を高山サイトや水田サイトのデータの解析から明らかにした。さらに、これらの解析と並行して放射モデルによる樹冠レベルのクロロフィル蛍光計算を思考した。この解析は、米国のハーバードフォレストやアマゾンの熱帯林で行い季節変化の再現性を確認するとともに植生指数NDVIなどの衛星指標も同時にモデルで計算し比較した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は以下の理由による研究が概ね順調に進展していると判断している。まず、個葉レベルの光合成活性とクロロフィル蛍光モデルについては、代表的なモデルSCOPEを入手しそのソースコードを確認しながら光合成と蛍光強度の関係を明らかにし、モデルの固定パラメータの妥当性などの議論が進んだ。平成29年度は平成28年度の知見を元にモデルを改良し放射伝達モデルの個葉モジュールとして入力する予定である。放射モデルの入力データとなる樹木構造モデルの検証では、検証データとなる航空機LiDARデータを国内の複数サイトで入手しデータの整備を行った。当初の予定では、オリジナルの点群データを用いて解析を進める予定であったが、入手したLiDARデータセットには既にラスタ画像化された樹高マップが存在していたため、作業の効率化のためにオリジナルの点群データではなく、樹高マップを利用した。結果として短時間で樹木の自動抽出を行うことができ、衛星LiDARデータや樹木モデルの検証に利用することが可能になった。クロロフィル蛍光を計算する放射伝達モデルの開発では、国外の研究者との共同研究によって、アマゾン熱帯林や米国のハーバードフォレストの解析を施行することができた。結果の詳細な妥当性の検討は次年度以降の課題であるが、概ね現実的な計算ができるまでにモデルの改善が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現状では、研究は順調に推移していると考えられるため、平成29年度以降も基本的には当初の実施計画にしたがって実施する。ただし、平成28年度に開発して、アラスカサイトなどに設置したクロロフィル蛍光測定用の分光観測システムは、観測1年目に当たる平成29年度は観測条件のセッティングの微調整が必要なため、1年目は高い品質のデータが取得できない可能性が考えられる。その場合には、1年目に引き続き国内のPhenological Eye Network(PEN)の分光データから算出したクロロフィル蛍光を参照データとしてモデルの開発を進める。
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