研究課題
本研究では、ヌクレオチド除去修復(NER)を阻害する化合物をケミカルライブラリーから見つけ、阻害メカニズムの解析を通じて細胞内NER反応の理解に寄与するとともに、これらの化合物の癌治療への応用も目指している。最終年度の研究成果は以下のとおりである。(1)細胞内NER反応のメカニズム解析化合物A6 によるERCC1分解とスピロノラクトン(SP)によるXPB分解に関与するE3リガーゼは、基質レセプターのみ異なるものの、ともにSCF複合体が関与し、後者の反応にはCDK7キナーゼも必要であることを明らかにした。また、XPBのSer90をアラニンに置換した変異体ではSP誘導分解に抵抗性を示し、この部位のCDK7によるリン酸化が重要な役割を担っている可能性が考えられた(Ueda et al., 2019)。一方、新たな化合物ライブラリースクリーニングから見出した2種類のNER阻害化合物について作用メカニズムを解析し、DNA損傷認識後にTFIIH複合体がリクルートされないことがわかり、DNA損傷認識因子の翻訳後修飾異常を介したNER初期過程の阻害である可能性を示唆した。(2)癌治療への応用の検討前年度の解析から、A6とオラパリブ(PARP阻害剤)の併用でがん細胞に相乗的な致死効果を及ぼすことがわかったため、このメカニズムを解析するとともに、PARP1欠損細胞がA6に対して高感受性を示すか検討するため、ゲノム編集を用いてPARP1ノックアウトHCT116細胞を作製した。その結果、A6の高活性誘導体を処理すると単独でも著しい細胞周期進行抑制を引き起こすことを見出し、特にG1 arrestが顕著であることを示した。一方、PARP1ノックアウト細胞はA6に対して期待したほどの高感受性を示さず、存在するPARP1の活性が阻害された状態がA6との相乗効果に必要であると考えられた。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
PLoS One
巻: 14 ページ: e0213383
10.1371/journal.pone.0213383
Genes to Cells
巻: 24 ページ: 284-296
10.1111/gtc.12674
http://www.p.kanazawa-u.ac.jp/~iden/