研究課題
本研究の目的は、次の2つである。1、トポイソメラーゼ2型酵素(Top2)がDNA切断端に共有結合したDNA 二重鎖切断(DSB)修復の分子メカニズムを明らかにすること、2、エストロゲンによるTop2依存的なDSB形成と疾患とを結びつけることである。2018年度は、目的2の解明に注力した。MCF-7細胞を使い、TOP2beta, 53BP1, TOP2beta/53BP1/BRCA1, TDP2欠損細胞を作製した。エストロゲン処理によってできるDSB損傷修復をgH2AX fociを指標に調べた結果、1、エストロゲンによってできるDSBは、TOP2beta依存的であること、2、エストロゲンによってできるDSB修復には、BRCA1が必要であること、を明らかにした。BRCA1が欠損すると非常に強いエストロゲンのDNA毒性が観察された。エストロゲン受容体に対する拮抗阻害剤を使い、このDNA毒性がエストロゲン受容体依存的であルことを示した。アメリカ国立衛生研究所(NIH)のAndre Nussenzweig博士と共同研究を実施し、エストロゲン投与によるDNA毒性をBRCA1欠損マウスの乳腺組織で調べた。BRCA1欠損マウス乳腺では、エストロゲン投与によってエストロゲン受容体陽性細胞であるルミナール上皮細胞でgH2AX fociが観察された。BRCA1遺伝子は、遺伝性乳がん、卵巣がんの原因遺伝子である。BRCA1はすべての細胞に必須である相同組換えに機能する。相同組換えは、DSB修復経路の一つであり、すべての細胞に必須である。もしBRCA1欠損によって発症するがんの原因が、相同組換えの異常であれば、臓器特異性のないがんを発症するはずである。本研究の意義は、エストロゲンによるTOP2依存的なDSBの修復にBRCA1が重要な働きをしていることを発見した。このBRCA1の新機能が、BRCA1欠損による臓器特異的発がんを説明できると考えている。これらの研究成果を、米国科学アカデミー紀要に発表した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
PLOS ONE
巻: 14 ページ: e0213383
10.1371/journal.pone.0213383
Molecular Cell
巻: 73 ページ: 1267-1281
10.1016/j.molcel.2018.12.010
Proc Natl Acad Sci U S A
巻: 115 ページ: 12793~12798
10.1073/pnas.1716349115
巻: 115 ページ: E10642~E10651
10.1073/pnas.1803177115