研究課題/領域番号 |
16H02956
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
紙谷 浩之 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 教授 (10204629)
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研究分担者 |
鈴木 哲矢 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 助教 (20573950)
小松 康雄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究グループ長 (30271670)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | DNA損傷 / 遠隔作用変異 |
研究実績の概要 |
(1) 新規レポーター遺伝子システムの構築:本研究課題においては、8-hydroxyguanine(8-OH-Gua)部位における変異を検出せずに遠隔作用変異を優先的に検出できることがバックグラウンド変異の低減の観点から望ましい。そこで、様々なレポーター遺伝子を挿入したプラスミドを構築し、アッセイを行って遠隔作用変異を優先的に検出できるレポータープラスミドシステムの選択を試みたものの、バックグラウンド変異がいずれも高かったため断念した。しかしながら、DNA損傷をsupF遺伝子中ではなく、supF遺伝子近傍の下流に導入することにより、遠隔作用変異を検出できるシステムを新たに開発したので、以降は本システムを用いることとした。 (2) WRNやDNA pol λ を欠損させたヒト細胞の作製:人工ヌクレアーゼを用いてゲノム編集する際にdonor核酸としてプラスミドDNAやオリゴデオキシヌクレオチドが用いられているが、それよりも長鎖一本鎖DNAやtailed duplexが有効であることを見出した。さらに、人工ヌクレアーゼCRISPR-Cas9を用いて、WRNやDNA pol λ をノックアウトしたヒトU2OS細胞や、ダブルノックアウト細胞を作製した。 (3) ノックアウト細胞における遠隔作用変異誘発率:作製したノックアウト細胞に、8-OH-Gua プラスミドを導入し、遠隔作用変異の誘発を観察した。しかし、ノックアウト細胞は増殖速度が遅く、アッセイには向いていない可能性が示唆された。ノックダウン細胞を用いた方が良い可能性がある。 (4) 他のDNA損傷による変異誘発:8-OH-Guaの代わりに、abasic site analogueを用いてアッセイを行った。8-OH-Guaが誘発する遠隔作用変異(G:C塩基対における塩基置換変異)とは別種の遠隔作用変異(欠失変異)が誘発される可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の理由により、概ね順調と判断している。(i) 遠隔作用変異を検出できる新規レポーター遺伝子システムを構築することに成功し、(ii) abasic site が 8-hydroxyguanine が誘発する遠隔作用変異とは別種の遠隔作用変異(欠失変異)を誘発する可能性を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、WRN や DNA pol λ をノックアウト・ノックダウンさせたヒト細胞を用いて、8-hydroxyguanine による遠隔作用変異誘発を調べるとともに、abasic site analogue や O6-methylguanine を用いて同様にアッセイを行い、遠隔作用変異が誘発されるか否かを観察する。
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