研究課題
本研究では、申請者が独自に発見した、複製ポリメラーゼのゲノムメンテナンスにおける機能について、分子機構を掘り下げるとともに、既知の損傷応答制御機構、DNA修復経路との役割分担を研究し、ポリメラーゼネットワークの制御機構の解明を行っている。H29年度には、以下の成果を上げた。(1) 複製ポリメラーゼδの校正エキソヌクレアーゼ活性は、ゲノム維持に寄与し、生存に必須な働きを担う。(2) 複製ポリメラーゼεの校正エキソヌクレアーゼ活性は、ヌクレオチドアナログの新生鎖への挿入を防ぐことで、ヌクレオチドアナログに対する耐性化に寄与する。(3) 複製ポリメラーゼεの校正エキソヌクレアーゼ活性は、カンプトテシンによるゲノム損傷に応答した複製フォークの安全な停止に必須であり、PARP経路とエピスタシスの関係にある。(4) 複製ポリメラーゼεの校正エキソヌクレアーゼ活性は損傷部位で停止した末端の相同組換え開始における削り込み反応に寄与するが、他のMre11などの2重鎖切断修復時の相同組換え反応の削り込み反応を担うヌクレアーゼは関与していない。(5)プロテオミクス研究による複製ポリメラーゼδ相互作用ネットワークを解明した。上記のようなポリメラーゼの遺伝学や生化学手法を使用した研究により、H29年度には、7報の論文を発表した。H30年度には(1~2)ポリメラーゼδの校正エキソヌクレアーゼ活性が果たす生存に必須の機能やヌクレオチドアナログの新生鎖への挿入防止機構を解明して論文発表する。(3)ポリメラーゼεの校正エキソヌクレアーゼ活性によるカンプトテシン耐性化機構については、H32年度までに電子顕微鏡による解析や生化学実験を実施し分子機構を解明し論文発表する。(5)のプロテオミクス解析で解明した複製ポリメラーゼδ相互作用ネットワークについて、H30年度中に相互作用の生理的意義を解明し論文発表する。
1: 当初の計画以上に進展している
計画していた複製ポリメラーゼδの研究に加え、リーディング鎖の複製を担当する複製ポリメラーゼεの研究も大きく進展し、2報の論文成果につながった。また、PARP経路との関係についても解析が進み3報の論文(うち2報は既報)につながった。H30年度にも複製ポリメラーゼδと複製ポリメラーゼεの研究を継続し、それぞれ2報ずつ成果報告を予定している。
複製ポリメラーゼの校正エキソヌクレアーゼ活性が担う、ゲノムメンテナンス機能について継続的に研究を推進する。また、プロテオミクスアプローチにより解明した複製ポリメラーゼδの相互作用ネットワークについて、相互作用の意義や分子機構を掘り下げる。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 5件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
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