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2017 年度 実績報告書

微小粒子状化学物質に対する生体応答分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16H02960
研究機関東北大学

研究代表者

中山 勝文  東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 准教授 (20453582)

研究分担者 森本 展行  東北大学, 工学研究科, 准教授 (00313263)
船本 健一  東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 准教授 (70451630)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードナノ粒子 / マクロファージ / 炎症 / インフラマソーム
研究実績の概要

シリカ(二酸化珪素)、アスベスト、PM2.5といった粒子状化学物質の大量暴露は肺の慢性炎症、線維化、癌化を引き起こすことがよく知られている。それら微粒子は生体内で主に免疫細胞のマクロファージに取り込まれるが、その認識分子機構は良く判っていない。前年度に我々は、マクロファージ細胞学に工学および情報科学を取り入れた学際研究により、シリカ受容体としてクラスBスカベンジャー受容体SR-B1を同定した。アモルファスシリカは、二酸化チタンと並んで、世界的に最も多く生産されているナノマテリアルであり、今年度はシリカを始め様々なナノ粒子の毒性評価を中心に研究を進めた。
これまでのナノ粒子の毒性評価については世界中の研究機関で精力的に取り組まれているが、それらのほとんどは個々の単一粒子について行われている。しかしながら、同時に複数のナノ粒子に暴露された際の毒性についてはほとんど解析されていない。そこで今年度は、世界的に産生量が多いナノマテリアルの低濃度の同時暴露による毒性をマウス細胞および個体を用いて解析した。その結果、SiO2およびTiO2ナノ粒子は、相乗的にマクロファージ炎症応答を惹起し、さらに激しい肺炎を誘発することがマウス実験により明らかになった。その作用機序として、2価カチオン依存的に粒子凝集が抑制され、マクロファージに取り込まれた後、SiO2ナノ粒子はリソソーム障害を、TiO2ナノ粒子は活性酸素産生をそれぞれ介して、相乗的な細胞内ストレスを与えることが判明した。本研究成果は、個々のナノ粒子単独では毒性を示さない低濃度であっても、複数のナノ粒子の同時暴露によって毒性を示す危険性を示唆し、今後の毒性評価の一助になると思われる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

発現クローニング法によりマクロファージのシリカ受容体としてクラスBスカベンジャー受容体SR-B1を同定し、さらにホモロジーモデリングによりSR-B1-シリカ粒子の結合様式も明らかにした。さらに他の材質のナノ粒子の炎症作用にも展開できたことから、おおむね順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

マクロファージによるシリカ粒子認識機構は複雑であり、SR-B1を介さない認識経路の存在も明らかになった。今後は、その経路を明らかにし、じん肺モデルマウスを用いて、その病態を解明に向けて研究を進める。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Fast and effective mitochondrial delivery of ω-Rhodamine-B-polysulfobetaine-PEG copolymers.2018

    • 著者名/発表者名
      Morimoto N, Takei R, Wakamura M, Oishi Y, Nakayama M, Suzuki M, Yamamoto M, Winnik FM
    • 雑誌名

      Sci. Rep.

      巻: 8 ページ: 1128

    • DOI

      10.1038/s41598-018-19598-2

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Macrophage Recognition of Crystals and Nanoparticles.2018

    • 著者名/発表者名
      Nakayama M
    • 雑誌名

      Front Immunol

      巻: 9 ページ: 103

    • DOI

      10.3389/fimmu.2018.00103

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] SiO2 and TiO2 nanoparticles synergistically trigger macrophage inflammatory responses.2017

    • 著者名/発表者名
      Tsugita M, Morimoto N, and Nakayama M
    • 雑誌名

      Part FIbre Toxicol

      巻: 14 ページ: 11

    • DOI

      10.1186/s12989-017-0192-6

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Endothelial monolayer permeability under controlled oxygen tension.2017

    • 著者名/発表者名
      Funamoto K, Yoshino D, Matsubara K, Zervantonakis IK, Funamoto K, Nakayama M, Masamune J, Kimura Y, Kamm RD
    • 雑誌名

      Integr Biol (Camb).

      巻: 19 ページ: 529-538

    • DOI

      10.1039/c7ib00068e

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Anti-TIM-3 Treatment Exacerbates Pulmonary Inflammation and Fibrosis in Mice.2017

    • 著者名/発表者名
      Isshiki T, Akiba H, Nakayama M, Harada N, Okumura K, Homma S, Miyake S
    • 雑誌名

      J Immunol

      巻: 199 ページ: 3733-3737

    • DOI

      10.4049/jimmunol.1700059

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 新規シリカ受容体の同定2017

    • 著者名/発表者名
      中山勝文
    • 雑誌名

      臨床免疫・アレルギー科 科学評論社

      巻: 68 ページ: 544-549

  • [雑誌論文] Trogocytosisによる免疫調節機構2017

    • 著者名/発表者名
      中山勝文
    • 雑誌名

      臨床免疫・アレルギー科 科学評論社

      巻: 67 ページ: 82-87

  • [学会発表] Recognition of nanoparticles and crystals by scavenger receptors.2017

    • 著者名/発表者名
      Masafumi Nakayama
    • 学会等名
      11th Meting of the Japanese Vaccine Adjuvant Research Consortium
    • 招待講演
  • [学会発表] Identification of a silica receptor associate with canonical inflammasome activation2017

    • 著者名/発表者名
      Masafumi Nakayama
    • 学会等名
      The 46th Annual Meeting of Japanese Society for Immunology
  • [学会発表] SR-B1はシリカ粒子認識およびインフラマソーム活性化に関与する2017

    • 著者名/発表者名
      中山勝文
    • 学会等名
      第26回日本Cell Death学会学術集会

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公開日: 2018-12-17  

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