研究課題/領域番号 |
16H02962
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
矢嶋 伊知朗 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (80469022)
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研究分担者 |
大神 信孝 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (80424919)
吉永 雅史 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (80754978)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヒ素 / 皮膚がん / 色素細胞 / 毒性学 |
研究実績の概要 |
研究計画にもとづき、【A】培養細胞を用いたヒ素誘導性多段階発癌の発症機構解析、および、【B】実験マウスにおけるヒ素誘導性多段階発癌の発症機構解析を実施した。培養細胞を用いた研究では、ヒ素曝露の有無によるサンプル作成及びDNAマイクロアレイ法による網羅的解析を実施、多数の候補遺伝子を単離した。それらの候補遺伝子の中には、発癌に関与する遺伝子や、皮膚色素沈着に関与する遺伝子が単離された。ヒ素誘発性皮膚疾患は皮膚がんや黒皮症に代表され、今回単離された遺伝子がヒ素誘導性皮膚疾患に大きく関与している可能性が示唆された。候補因子の幾つかに関しては、発癌活性との関係を明らかにするため、siRNAトランスフェクション法を用いたノックダウンによる機能解析を実施した。正常ヒト角化細胞株(HaCaT)へのヒ素曝露は足場非依存的増殖を誘発するが、候補遺伝子の幾つかでは、ノックダウンによって足場非依存的増殖が強く抑制されることが明らかとなった。この結果は、候補遺伝子がヒ素誘導性皮膚癌発症に機能的に関与していることを示唆している。 実験マウスにおけるヒ素誘導性多段階発癌の発症機構解析では、ヘアレスマウス、或いはC57BL/6マウスに対する、飲水投与でのヒ素曝露を実施した。曝露後皮膚試料を採取、total RNA及びタンパク質の精製、組織解析用のパラフィン切片作成を実施した。上記DNAマイクロアレイによって単離された遺伝子及びコードするタンパク質の発現量、発現パターンをリアルタイムPCR及びウェスタンブロット、組織免疫学的解析によって解析した。単離された候補遺伝子の幾つかは、ヒ素曝露によってマウス皮膚上皮細胞や色素細胞(メラノサイト)での発現上昇、或いは発現低下が観察され、ヒ素曝露による発現制御を受けている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度から30年度に実施予定の【A】培養細胞を用いたヒ素誘導性多段階発癌の発症機構解析、平成28年度から31年度に実施予定の【B】実験マウスにおけるヒ素誘導性多段階発癌の発症機構解析について、計画通り進んでいる。【A】培養細胞を用いたヒ素誘導性多段階発癌の発症機構解析については、DNAマイクロアレイ法による分析結果で多数の候補遺伝子の単離が成功し、それらの一部の発現解析や機能解析も順調に進んでいる。【B】実験マウスにおけるヒ素誘導性多段階発癌の発症機構解析も、曝露試験とその後の解剖、発現解析、組織解析を順当に進めており、全体としておおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、当初の計画通り、【A】培養細胞を用いたヒ素誘導性多段階発癌の発症機構解析、および、【B】実験マウスにおけるヒ素誘導性多段階発癌の発症機構解析を引き続き実施し、in vitro、in vivo両面での並行した研究を実施する予定である。培養細胞におけるDNAマイクロアレイ解析で多くの候補遺伝子が単離されており、今後もそれら候補因子の解析を順次行う予定である。また、フィールドワーク実施によってヒト検体を多数入手しており、今後は培養細胞や実験動物だけでなく、ヒト検体における分子生物学的解析も実施予定である。
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