研究課題
日本およびベトナムの都市環境よび廃棄物処理地域におけるヒトや陸上野生動物に対する残留性有機汚染物質(POPs)および内分泌かく乱物質(EDCs)様物質の曝露実態とその包括的な生態リスク評価を目的として、新たに採取したダスト・大気試料や愛媛大学es-BANKに保管されている野生動物の臓器・組織試料を対象に、前年度に開発した試料前処理法や先端的機器分析手法を適用して、有機ハロゲン化合物の包括・網羅分析やPOPs・EDCsの一斉分析、マスバランス解析等に取り組んだ。具体的には、土壌・ダストの認証値付標準試料や以前の相互検定研究でPOPs等を測定した飛灰・底質・生物試料(スナメリ脂皮)について、低分子画分・高分子画分に分けて有機態ハロゲン(EOCl・EOBr)の包括・網羅分析を実施し、既知・未知物質のマスバランスを解析した。その結果、ダスト試料中の低分子画分EOBrのほとんどが臭素系難燃剤のPBDEsで説明できることを除けば、多くの環境・生物試料において低分子EOCl・EOBrの大半が未知物質(PCBsなど既知のPOPs以外)であることが示唆された。さらに、二次元ガスクロマトグラフ高分解能飛行時間型質量分析計を用いて、それら未知のハロゲン化合物が含まれると考えられる試料について有機ハロゲン化合物の網羅分析を実施した(詳細データは解析中)。また、新たに採取したベトナムや日本の大気・ダスト試料についても、POPsおよびPAHs関連物質のターゲット分析を進めるとともに、前年度に確立したGC-MS全自動同定・定量データベースによる微量汚染物質約1000種のスクリーニング分析を進め、発生源の特定やヒトへの曝露リスク評価等を実施した。さらにin vitroバイオアッセイCALUXについて、ダスト・生物試料を対象としたダイオキシン様活性・内分泌かく乱活性の測定条件の最適化に関する検討を進めた。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要で述べたように、本年度は前年度に開発・確立した試料前処理法や有機ハロゲン化合物の包括・網羅分析を各種環境試料・生物試料に適用して、EOCl・EOBrのマスバランス解析に取り組み、一定の成果をあげることができた。また、二次元ガスクロマトグラフ高分解能飛行時間型質量分析計(GCxGC-HRTOFMS)を用いた未知ハロゲン化合物のスクリーニング・同定分析に着手するなど、挑戦的な課題についても順調に進められている。ベトナム・日本における大気やダスト試料など新たな環境試料の採取や分析も進み、今後のさらなるマスバランス解析や毒性同定評価、曝露リスク評価研究につながるデータも得られている。in vitroバイオアッセイCALUXによる各種環境・生物試料のダイオキシン様活性・内分泌かく乱活性の測定についてもほぼ目途がついている。
これまでの研究でPOPs・EDCs等の濃度が得られた代表的な環境試料・生物試料を対象に、in vitro バイオアッセイパネルによる内分泌かく乱活性の測定と毒性同定評価に関する研究を進める。すなわち、試料の粗抽出液やGPC・硝酸銀シリカゲルカラムによる分画溶液を、ヒトのAhR、エストロゲン受容体、アンドロゲン受容体を核内受容体として組み込んだin vitro レポーター遺伝子(CALUX)アッセイに供試し、試料中の総ダイオキシン様活性(Bio-TEQ)および性ホルモン撹乱活性(Bio-E2EQ/Flutamide EQ)を測定する。これらバイオアッセイで得た結果を機器分析で得られたデータや既報のバイオアッセイ比活性データと統合・解析し、主要な既知・未知物質(群)の毒性応答への寄与を明らかにする。また、未知物質を多く含むと予想される試料については、X線吸収微細構造解析(XAFS)等により試料中のハロゲンのスペシエーションを行って、その化学形態情報を得るとともに、GCxGC-HRTOFMSによるノンターゲット網羅分析を行って、未知活性物質の探索・同定を試みる。同定された潜在的活性物質や候補物質について、標準物質の入手あるいは精製・合成を行い、GC-HRMS等で試料中濃度を定量し、その汚染実態やEOX・既知物質に対するマスバランスを解明するとともに、in vitro バイオアッセイパネルによりそのハザード特性を把握する。最終的に、潜在的活性物質・候補物質を含む網羅分析手法とマスバランス解析・毒性同定評価を統合したPOPs・EDCsの包括的リスク評価系の構築に向けて研究成果を総括する。
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