地域スケール及び周極全体スケールの相互比較から探る南極海動物プランクトン群集変動

2019 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 16H02970
• 研究機関: 国立極地研究所
• 研究代表者: 高橋 邦夫 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (50413919)
• 研究期間 (年度): 2016-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: 連続プランクトン採集器 / 動物プランクトン / 生物海洋

研究実績の概要

本研究課題は、南極海において連続プランクトン採集器（CPR）を用いた観測を実施している国々の観測データを主要なデータセットとし、地域スケールおよび周極全体スケールで、動物プランクトン群集の中長期的および短期的な変化やトレンドを抽出することを目指している。得られた結果から、生態系変動への波及効果の大きい指標書の選定、および南極海の動物プランクトンに関するStatus Reportの作成を目標とする。
令和元年度は標本処理のための技術者確保が困難であったため、外部のプランクトン分析業者に委託して標本処理を進めた。
5月にオーストラリアから海外共同研究者であるGraham Hosie氏を招聘し、Status Reportの執筆ワークショップを開催し、初稿原稿を完成させた。共著者の確認作業を実施しており、最終年度（令和2年度）の出版を予定している。
6月にフランスで開催された海洋生物化学的循環と生態系との相互作用の調査を目的とする国際プロジェクトIMBeR（Itegrated Marine Biosphere Research）の国際シンポジウム、および9月にハワイで開催された全球的な海洋観測システムに関する国際会議 Ocean Observation 2019においてCPRプロジェクトの紹介と成果報告を実施した。7月には国内において、短期的な地域スケールでの現存量の増減が確認されていた翼足類におけるワークショップに参加して議論を行った。また研究成果は2月に北海道紋別市で行われた北方圏国際シンポジウムにおいて発表した。
新規参入国の技術者育成に向けた、CPR標本処理マニュアル、および動物プランクトン同定マニュアルの作成も海外共同研究者と共に作業を進めた。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和元年度は外部のプランクトン分析業者に委託した結果、標本処理を順調に消化することが出来た。また国際シンポジウムや国内ワークショップの機会を通じて、研究結果に関する議論を進めることが出来た。最終目標であるStatus Reportは既に初稿が完成し、最終年度（令和2年度）での出版へ向けた準備が順調に進んでいる。これまで得られた成果については国際誌に1報公表され、現在2報が投稿審査中である。

今後の研究の推進方策

本研究課題で用いるCPR標本は、処理に専門的な知識と技術を必要とする。そのため標本処理を担当する研究協力者の確保が困難な場合は、今後も外部のプランクトン分析業者に委託することで補う。Status Reportの出版に向けた準備と並行して、新規参入国における技術者育成のための教材の作成を進める。当初は参入国における技術者育成ワークショップを計画していたが、現在の世界状況を鑑み、CPR標本処理マニュアル、および動物プランクトン種同定マニュアルを作成する方針に変更した。

研究成果

• [国際共同研究] Australian Antarctic Division(オーストラリア)
  • 国名: オーストラリア
  • 外国機関名: Australian Antarctic Division
• [雑誌論文] A Global Plankton Diversity Monitoring Program. (2019)
  • 著者名/発表者名: Sonia D. Batten, Rana Abu-Alhaija, Sanae Chiba, Martin Edwards, George Graham, R. Jiyothibabu, John A. Kitchener, Philippe Koubbi, Abigail McQuatters-Gollop, Erik Muxagata, Clare Ostle, Anthony J. Richardson, Karen V. Robinson, Kunio T. Takahashi, Hans M. Verheye and Willie Wilson
  • 雑誌名: Frontiers in Marine Science 巻: 6 ページ: 321
  • DOI: 10.3389/fmars.2019.00321
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [学会発表] The status and trends of Southern Ocean zooplankto (2020)
  • 著者名/発表者名: Kunio T. Takahashi, and SCAR SO-CPR Survey Team.
  • 学会等名: The 35th International Symposium on Okhotsk Sea & Sea Ice.
  • 国際学会
• [学会発表] The spatial and temporal variations in meal total zooplankton abundance and average copepod community size of the Southern Ocean from the SO-CPR activities. (2019)
  • 著者名/発表者名: Kunio T. Takahashi, John A. Kitchener, Karen V. Robinson, Graham W. Hosie, and SO-CPR Survey Team.
  • 学会等名: Integrated Marine Biosphere Research (IMBeR) Open Science Conference 2019
  • 国際学会
• [学会発表] Patterns and trends in environmental and ecological (zooplankton) properties of the Southern Ocean between 1997 and 2018. (2019)
  • 著者名/発表者名: Matt H. Pinkerton, Moira Decima, John Kitchener, Kunio Takahashi, Karen Robinson, Robert Stewart, Graham W. Hosie.
  • 学会等名: 10th International Penguin Conference
  • 国際学会
• [学会発表] The status and trends of Southern Ocean zooplankton based on the SCAR Southern Ocean Continuous Plankton Recorder (SO-CPR) survey. (2019)
  • 著者名/発表者名: Kunio T. Takahashi.
  • 学会等名: Ocean Observation 2019
  • 国際学会
• [学会発表] The annual variability in abundance and sell size of the pteropods Limacina spp. in the seasonal ice zone of the Southern Ocean. (2019)
  • 著者名/発表者名: Kunio T. Takahashi, Haruko Umeda, Tsuneo Odate.
  • 学会等名: The 10th Symposium on Polar Science.
  • 国際学会