研究課題/領域番号 |
16H02971
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
武田 志乃 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線障害治療研究部, 上席研究員(定常) (00272203)
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研究分担者 |
小平 聡 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 計測・線量評価部, 主幹研究員(定常) (00434324)
小久保 年章 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 技術安全部, 課長(定常) (10425663)
小西 輝昭 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線障害治療研究部, 主任研究員(定常) (70443067)
臺野 和広 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線影響研究部, 研究統括(定常) (90543299)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 内部被ばく / ウラン / 幼若毒性 / 腎臓 / イメージング / 晩発影響 / マイクロビーム |
研究実績の概要 |
東電福島第一原発事故で多くの放射性核種が飛散し、内部被ばく影響、特に小児期被ばくの晩発影響に高い社会的関心が向けられた。格納器内部調査が進むなど本格化する福島原発廃炉作業での有事に備え、関連核種の生体影響に関する科学的知見の整備が求められている。ウランはα線核種としての放射線毒性に加え重金属としての化学毒性も有し、幼齢期での腎毒性重症化や遅いウラン腎臓代謝が報告されているが、小児期影響のリスク評価の基礎となるデータは乏しい。本研究では、ビームサイエンス等のin situ解析技術を多元的に組み合わせたミクロンレベルの解析手法を確立し、放射線および化学毒性の両側面からウラン晩発影響の小児期特性を解明することを目指す。本研究の遂行により、内部被ばく核種のリスク評価に不足している被ばく時年齢の毒性修飾や晩発影響に関する科学的知見が得られることが期待できる。 具体的には、腎臓のS3近位尿細管に限局的に観察されるウランの不均一分布、すなわちミクロンレベルの微小領域に存在するウラン濃集部に起因する局所線量影響とそのウラン化学形状態変化に起因する酸化ストレス誘発に着目し、まず腎臓の薄切試料から1)α線飛跡による線量分布解析、2)ウラン局在・化学状態解析、3)組織病理および免疫組織学染色による酸化的損傷解析、4)マイクロダイセクション法による分子解析を行うin situ解析手法を確立する。ウランを投与した幼若および成熟ラットの腎臓について解析を行い、小児期晩発影響の特性を示す。2018年度はα線飛跡解析と組織病理解析との組み合わせ手法を確立し、ウランが腎臓の近位尿細管下流領域に蓄積し、α線付与を生じていることを特定した。また、放射光マイクロビームを利用し蛍光X線イメージングと2次元XAFS、ならびに組織病理解析と組み合わせ、ウラン化学形分布を明らかにする手法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では腎臓の薄切試料から1)α線飛跡による線量分布解析、2)ウラン局在・化学状態解析、3)組織病理および免疫組織学染色による酸化的損傷解析、4)マイクロダイセクション法による分子解析の4つin situ解析手法の確立に取り組み、これによりウラン晩発影響の小児期特性の解明を目指す。2018年度は各in situ解析と組織病理解析の組み合わせ手法を検証、適時改良を加えると共に、腎臓実サンプルに適用し、以下の成果を得た。 1)α線飛跡による線量分布解析:ウラン投与後1日目のサンプルについて、腎臓横断面の飛跡解析を行った。CR-39の飛跡分布と隣接切片の下流部位近位尿細管(S3尿細管)分布を対応させることにより、S3尿細管領域への部位選択的なα線付与を特定し、論文にまとめた。また蛍光飛跡の部材の検討も進めた。 2)ウラン局在・化学状態解析:腎臓切片に対する2次元XAFSに着手し、尿細管のウラン濃集部におけるウラン化学形分布を明らかにする手法を確立した。ウラン投与ラット腎臓サンプルに順次応用し、化学形分布情報を構築した。 3)組織病理および免疫組織学染色による酸化的損傷解析:ウラン局在部の組織病理変化について、投与後1日目から6週間後までの経時的なデータを構築した。 4)マイクロダイセクション法による分子解析:近位尿細管のS1およびS2セグメントとS3セグメント分別のため、腎臓凍結切片に対するPAS染色条件の検討を行った。また、ウラン動物モデルの作出については、高投与量モデルの尿解析を進め、毒性経時変化を把握した。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度以降は各in situ解析の対応精度、解析条件を検証、適時改良を加える。腎臓実サンプルの解析を進める。 1)α線飛跡による線量分布解析:α線飛跡固体検出器の素材等の検討も加え、腎臓内微細構造との対応精度を向上させる。α線飛跡の3次元解析に向けた基礎検討に取り組む。 2)ウラン局在・化学状態解析:ウラン投与の腎臓サンプルについて、順次解析を進める。S3近位尿細管における2次元化学状態分析について懸念材料となっていた位置精度を高め、ケミカルイメージングに向けたスペクトル解析を進める。尿細管等の腎臓微細構造との対応を検討する。 3) 組織病理および免疫組織学染色による酸化的損傷解析:PAS染色による尿細管セグメント分別と酸化的損傷解部、α線飛跡やウラン局在解析用試料と組み合わせ手法を検討する。ウラン濃集に関連するミネラリゼーション因子の免疫染色加えることで、ウラン濃集部の簡易検出につなげる。 4) マイクロダイセクション法による分子解析:近位尿細管のS1およびS2セグメントとS3セグメントの分別サンプリング精度を向上させるため、近位尿細管領域由来培養細胞実験系による特異マーカー抽出の検討も加える。順次遺伝子発現解析およびDNA損傷解析を行う。また、高容量ウランばく露ラットモデルの試料を順次作成し、解析を進める。
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