研究課題
電気化学-表面プラズモン共鳴(EC-SPR)法は電気化学測定とSPR測定を組み合わせることで,二元の検出特性を同時に発現させ,高い選択性を実現する分析法である。本研究では,システムの簡略化とリモートセンシングへの応用が期待できる光ファイバーをセンサーの母体とし,金ナノ粒子による局在表面プラズモン共鳴(LSPR)を利用することで更なる独創性を付与した新規電気化学-光ファイバーセンサーの開発を試みた。センサー応答は,分析対象物質の電気化学反応に起因したLSPR波長のシフトから得られる。多角バレルスパッタリング法によって,コアを露出させた光ファイバー表面に酸化インジウムスズ(ITO)を均一に蒸着することで,ITO-光ファイバー電極を作製した。その後,球状の金ナノ粒子を高分子電解質から成る自己組織化膜によってITO表面に修飾し,センサーを作製した。モデル分析対象物質としてRu(NH3)2+/3+,メチレンブルー(MB)とFe(CN)63-/4-を使用した。Ru(NH3)2+/3+のEC-LSPR測定を行ったところ,電位の三角波掃引に伴って可逆性のあるLSPR波長シフトが得られた。各電位における波長シフト量をプロットし,これにサイクリックボルタモグラムを重ね合わせた結果,急激なLSPR波長シフトが起こる電位とRu(NH3)2+/3+の酸化還元電位がほぼ一致していた。また,Ru(NH3)2+/3+とは酸化還元電位の異なるMB,Fe(CN)63-/4-を用いて同様の測定を行った結果, LSPR波長シフトは同様に,MB,Fe(CN)63-/4-それぞれの酸化還元電位でみられた。これらの結果から,EC-LSPR測定によって得られるLSPR波長のシフトは分析対象物質の酸化還元反応に起因するものであることが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
綿密に立案した研究計画に従い、当初の想定以上に研究が進行した。目的とするセンサー開発の部分と基礎的な性能評価はおおむね終了した。また、研究計画には記載していなかったセンサーの再生がプラズマ処理により可能であることを発見し、実験データ収集の効率化がなされた。
高い選択性を有する本センサーの特性を活かした環境分析への応用を確立します。例えば、合成抗生物質による環境汚染は薬剤耐性菌の生成に繋がることから、ヒトへの深刻な影響が懸念されています。そこで、下水や畜産排水中に含まれるテトラサイクリン系抗生物質の遠隔リアルタイム計測システムへの応用を試みます。また、酵素の電極反応を触媒する酸化還元活性物質(メディエーター)を金ナノロッドに被覆したセンサーを作製し、汚染度の高い環境水や土壌間隙水など、従来法では直接計測できないマトリクスが複雑な試料の毒性評価を可能にするメディエーター型酵素センサーを開発します。
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