研究実績の概要 |
本研究では、従来からなされているカソード表面・界面の設計によるのではなく、アノード内電極活物質と酸化物固体電解質間の界面に新規な活性サイトを設計することで、カソード側2層界面の酸素還元反応及びアノード側3相界面の水素酸化反応の双方の電極反応速度のバランスをとり、真に社会実装に役立つ高性能SOFCデバイスの作成を行うことを目的とした。 昨年度、それまでの極微少量(100ppm 前後)のPtOxやRhOxまたは0.1wt%から0.2wt%のFeOxやMnOxの微量蒸着とその水素還元処理により、大幅な性能改善結果を見出したアノード内3相界面近傍のNi上において、TEMによる超構造の観察と、その表面欠陥構造シミュレーション(Code: GULP, 経験的ポテンシャル:バッキンガム・ポテンシャル)を組み合わせた解析に成功した結果を基に、アノード内3相界面近傍のYSZ上に形成されたと考えられる活性サイトの欠陥構造の解析に注力した。 YSZ上の活性サイトの解析には、Ni上に考えられた欠陥クラスターモデルに基づき、同種の活性サイト形成の可能性を、DFT+Uシミュレーション(Code:ABINIT, 擬ポテンシャル: PAW法)を用いて検討したところ、YSZ上でも、Ni上に想定されたと同種の欠陥クラスターサイトの形成と、この欠陥クラスター周囲における表面酸化物イオン拡散現象の促進(つまり表面酸化物イオン拡散の障害となるエネルギー障壁の低下)を示唆する電子密度の変化が認められた。 以上の結果より、アノード層内3相界面近傍に、2価カチオンと極微量な3価カチオンが共存することが、大きな活性向上につながるということが計算からも確認され、3相界面の活性化に有用な欠陥構造創製のための合成条件の最終微調整に関し、有用な知見がえられるとともに、その実現への道が拓かれた。
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