研究課題/領域番号 |
16H02983
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
二宮 善彦 中部大学, 工学部, 教授 (10164633)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ハロゲン化揮発法 / 放射性セシウム / 固体廃棄物 / 微量有害元素 / 平衡計算 / 塩化カルシウム / 臭化カルシウム |
研究実績の概要 |
本研究では、ハロゲン化揮発法による固体廃棄物に含まれる有害微量元素の高度分離除去技術の開発を行うことを目的に研究を行っている。本年度は、① Cs、Co、Euなど約60元素について、塩化および臭素化揮発法による揮発率の測定、② 試作した小型のロータリキルン試験装置による顆粒焼却灰に含まれるCsの塩化揮発挙動の解析、③ 塩化揮発反応に関する基礎研究、を実施した。以下に本年度の研究成果の概要を説明する。 (1)るつぼ試験装置に非放射性試料とCaCl2およびCaBr2、炭素などを加えて、電気炉で800~1500℃の所定温度まで加熱し、試料に含まれる約60元素の塩化揮発、臭素化揮発の挙動をICP-MS、ICP-AES、原子吸光分析装置などで測定した。Euは試料中に数ppm含まれ、臭素化揮発により試料中のEuの10~30%が揮発することを確かめた。また、EuおよびAl2O3を含む模擬試料を作成し、臭素化揮発の基礎実験を行い、その反応機構を詳細に検討した。 (2)小型ロータリキルンによる顆粒焼却灰試料による塩化揮発実験を1000~1400℃で実施した。顆粒試料がCaCl2添加剤により溶融しない1200℃以下ではCsの約50%が塩化揮発することを確認した。しかし、1300℃以上では顆粒試料がCaCl2中のカルシウムと反応して部分溶融し、炉壁に付着するため、ロータリキルン方式ではCsの塩化揮発処理ができないことが明らかになった。そこで灰溶融方式を模擬したるつぼ炉で試験したところ、1500℃で顆粒試料が完全に溶融し、Csの95%が揮発することを確認した。 (3)焼却灰およびセシウムをドープした模擬灰を使用して種々の条件の塩化揮発実験を行い、反応機構を検討した。また、添加剤としてMgCl2の効果を検討したが、MgCl2の分解温度が低いため、Csの除去効果がCaCl2に比べて低いことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)非放射性焼却主灰を使用し、Cs、Co、Euなど約60元素について、塩化および臭素化揮発法による揮発率の測定を行い、各元素の揮発挙動を明らかにするとともに熱力学平衡計算ソフトウエア(Factsage)と比較検討をすることができた。また、Euを数ppm含む試料を臭素化揮発により試料中のEuの10~30%が揮発することを確かめた。また、EuおよびAl2O3を含む模擬試料を作成し、臭素化揮発の基礎実験を行い、その反応機構を詳細に検討した。 (2)小型ロータリキルンによる顆粒試料に添加剤を加えた塩化揮発実験を1000~1400℃で実施した。顆粒焼却灰試料がCaCl2添加剤により溶融しない1200℃以下ではCsの約50%が塩化揮発することを確認した。しかし、1300℃以上では顆粒焼却灰がCaCl2中のカルシウムと反応して部分溶融して炉壁に顆粒焼却灰が付着するため、ロータリキルン方式ではCsの塩化揮発処理ができないことが明らかになった。そこで、試料が部分溶融する高温の塩化揮発処理方式として灰溶融方式が実用的と考え、灰溶融方式を模擬したるつぼ炉で試験することにした。この結果、焼却灰試料が完全に溶融する1500℃では試料中のCsの95%が揮発することが確認された。 (3)放射性セシウムを含まない焼却灰およびセシウムをドープした模擬灰を使用して種々の条件の塩化揮発実験を行い、反応機構を検討することができた。焼却灰に30%wtのCaCl2を添加した場合、1200℃以上の温度でセシウムの揮発率が90%以上を超えることを確かめた。また、700~1100℃の温度範囲でCsCaCl3が反応中間体として生成していることをX線回折装置にて確認した。焼却灰に添加する添加剤としてMgCl2の効果を検討したが、MgCl2の分解温度が低いため、Csの揮発除去効果は、CaCl2に比べて低いことも確認した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)粉末の焼却灰試料については、1200℃以下の塩化揮発法によって、Csの80%以上を揮発させることが確認してきたが、顆粒焼却灰試料にすると1200℃以下温度ではCsの約50%しか塩化揮発しないことがロータリキルン試験により明らかになった。この温度以下では灰が部分溶融しないため、ロータリキルン炉で操業できる温度である。しかしながら揮発率を高くするため1300℃以上の温度にすると、顆粒焼却灰がCaCl2中のカルシウムと反応して部分溶融して炉壁に顆粒焼却灰が付着するため、ロータリキルン方式ではCsの塩化揮発処理が困難であることが実験から明らかになった。そこで、試料が部分溶融する高温の塩化揮発処理方式として灰溶融方式の方が実用的と考え、灰溶融方式を模擬したるつぼ炉での試験を行い、灰が溶融する領域でのCsおよび放射性セシウムの塩化揮発挙動を明らかにする方針に変更して実験を行うことにした。 (2)Euを数ppm含む試料を臭素化揮発により試料中のEuの10~30%が揮発することを確かめている。本研究ではハロゲン化揮発法によりEuの80%以上を揮発させることを目標に実験を行っている。現時点ではEuをドープした模擬試料では約80%の揮発率を達成しているが、模擬試料中のEu含有率を下げると揮発率も低下する傾向にあり、最適なハロゲン化揮発条件を探索する実験を来年度も継続する。
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