研究課題
ヒトに身近なイヌやネコなどペット動物は様々な化学物質に曝露していると考えられる。近年ではPCBsやPBDEs曝露とペット動物の疾病との関係も疑われており、甲状腺機能亢進症や2型糖尿病を発症したネコから対照群と比べ高濃度のPCBs・PBDEsが検出されている。そこで本年度はネコを用いたPCBs in vivo投与試験を実施し、肝臓を用いたトランスクリプトーム解析および血清を用いたメタボローム解析を実施し、毒性発現メカニズムの理解を試みた。次世代シーケンスによる遺伝子発現を測定した結果、対象とした21890遺伝子のうち、コントロール群と比較して有意に変動した遺伝子数は531であった。パスウェイ解析の結果、炎症や感染症に関連する経路が同定され、PCBs曝露による免疫系のかく乱が予想された。とくに、PCBs曝露によって免疫細胞(ヘルパーT細胞)の分化に関連した遺伝子(TGFB1、IL4R、JAK3、FOS、JUN)のmRNA発現量に減少がみられた。メタボローム解析の結果、アミノ酸、アミン等を含む122種のメタボロームが有意な変動を示した。パスウェイ解析の結果、糖分解・糖新生、ペントースリン酸回路、ヒスチジン代謝系、プリン代謝系等の中心炭素代謝に関連するメタボロームが減少しており、PCBs曝露に伴うこれらの代謝経路の抑制が示唆された。次にイエネコを対象にしたBDE209のin vivo長期曝露試験を実施し、体内動態について調査した。血清の分析から代謝に伴う脱臭素化が確認されたが、水酸化代謝物は検出されなかった。次に臓器・組織の蓄積レベルについて解析した結果、イエネコでPBDEsの腎集積が確認された。腎臓へのPBDEs高集積はこれまで他の野生動物の調査では確認されておらず、ネコ特異な体内挙動であると考えられる。今後は腎疾患との関係について注目した調査が必要であろう。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Chromatography A
巻: 1539 ページ: 30-40
10.1016/j.chroma.2018.01.044.