研究課題/領域番号 |
16H02991
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
吉野 邦彦 筑波大学, システム情報系, 教授 (60182804)
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研究分担者 |
露崎 史朗 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (10222142)
串田 圭司 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (90291236)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高層湿原 / 生物多様性ホットスポット / 植物群落分類 / 超多重分光画像 / ドローン空中写真 |
研究実績の概要 |
本研究は,今までの研究から環境変化の予兆が局所的に認められ生物多様性に富む釧路湿原の高層湿原(生物多様性ホットスポット)を対象にして,1)衛星ハイパースペクトラル・リモートセンシング画像データ(多重分光画像データ)を用いて,複数年次分の高正答率の詳細な植物群落図を作成して,2)それらを比較することにより,より広範囲の高層湿原内の植物群落変化の有無を確認し,3)変化の原因やメカニズムを考察することにより,当湿原の貴重な生物多様性の保全に寄与することを目的としている. そこで,H28年度は,(1)UAV(ドローン)による釧路湿原対象地域(赤沼,温根内の高層湿原)の高解像度空中写真撮影と撮影画像約1000枚の後処理(モザイク)と(2)精密GPS測量と現地植物調査によるドローン写真を用いた植物群落分類のためのサンプリングである.また,(3)ドローン空中写真撮影日時とほぼ同じ時期の衛星リモートセンシング画像(WorldView3衛星の可視近赤外画像データと短波長赤外画像データ)を購入し,ドローンデータとの幾何的整合性を取るための幾何補正を行った.(4)ドローン空中写真からの精細植物群落マップを利用した衛星リモートセンシング画像からの詳細植物群落分類のために必要な植物群落の分光特徴量推定のための解析プログラムを開発した. ドローンによる空中写真撮影は,高度約50mの低高度から撮影しているため,撮影された高層湿原の画像は個々の植物が目視判読可能なくらい非常に良い画質である.また,予め撮影地点をプログラムしたGPS搭載ドローンを用いたため,非常に効率的な空中写真撮影が可能であった.そのため,約1000枚に及ぶ空中写真同士の貼り合わせやデジタル標高モデルの計算も期待以上に高精度の結果が得られた.地上調査時に精密GPSで測位したサンプリング地点がドローン空中写真上で,高精度で一致した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地での植物群落調査時期が,空中写真からの目視判読が最も難しいワタスゲ類の開花時期よりやや遅れてしまい,現地でのワタスゲ類の区別がやや難しく,ワタスゲ類群落のサンプリングに問題が生じた懸念がある.が,H28年度の本研究の進捗状況は,ほぼ計画通りに進捗している.H29年度にも現地調査を予定しているので,確認する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
H29年度は,以下の観測,調査,データ解析と分析を計画しており,本研究の目的を遂行する予定である.(1)6月中旬~7月上旬の現地植物調査の実施,(2)植物群落サンプルデータの整理,(3)H28年のドローン空中写真モザイク画像を用いた解析対象地区の精細植物群落図の作製と分類精度評価,(4)超多重分光画像データを用いた広域の湿原植物群落分類を行う. この成果をもとにして,H30年度は,(1)H29年度に行った超多重分光画像データの分類結果の精度評価と再修正,(2)釧路湿原高層湿原全体の植物群落図の完成を予定している.最終年度のH31年度は,過去の衛星リモートセンシング画像データによる植物群落分類図とH30年度に完成する植物群落図とを比較し,釧路湿原高層湿原地帯の植物群落の変化を検出,その変化の原因を考察する予定である.
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