研究実績の概要 |
平成28年度は,兵庫県東南部(神戸,西宮,伊丹市,尼崎,川西,三田,宝塚市,猪名川町)の里山域-都市域にまたがって前年度調査した9 地点に加えて,新たに6地点の水田域の畦畔に調査プロットを設定していた.新しく設定したプロットにおいて開花植物及び訪花昆虫相を調査し,また花や送粉者の形質測定を行った.全15地点のデータを解析し,里山の水田に比べ都市水田では,畦畔でみられた開花植物・訪花昆虫ともに,種数だけでなく機能的多様性が有意に低かった.現在,この機能的多様性の減少をもたらす要因について解析を進めている. また同地域内で20地点の水田域の畦畔を調査し,畦畔上の全ての維管束植物,観察されたチョウ・バッタ類の多様性について解析の結果,都市水田での種多様性の減少が確認された.この多様性減少を引き起こす要因として,水田周囲の景観変化(周囲1kmの土地利用データを利用して,人工地率や二次林率等の過去60年間の変化),土壌条件,管理頻度などの影響について解析を行なっている. また, これまで捕獲し,冷凍庫内でエタノール液浸保存されたバッタサンプルを利用して食草分析を開始した.サンプルの消化管内に残された植物破片からDNAを抽出(DNAサンプルは長期保存可)し,DNAバーコーディングで一般的に使われる葉緑体および核 DNAの2-3 領域をユニバーサルプライマーでPCR 増幅し,次世代シーケンサーによって解析し,DNA 配列をもとに食草の同定をおこなっている.また,これまで調査地に生育する植物種のDNAデータベースを作成するために現地で植物サンプルも同時に収集してきた.これは連携研究者・山本哲史と非常勤研究員を中心として遂行した.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度までに,送粉ネットワークのベースデータを里山域から都市域まで15地点で取得することができたため,ネットワーク構造の変化の影響が植物の繁殖成功に影響を与えうるのかについて研究を行う予定である.具体的には多数の調査地に分布する植物種10種以上を対象に開花後の柱頭をサンプリングし,柱頭上に付着した花粉数を計数し,ネットワーク構造の異なる地点間で比較する. またこれまで進めてきた植物・植食性昆虫の種多様性の変化に関して,その要因の解明に関する解析の結果と季節動態の均質化を明らかにした解析の結果について論文を執筆して投稿する. さらに,胃内容物のメタバーコンディンング解析をもとに行なっているバッタの食草同定に関して,これまで調査地に生育する植物種のDNAデータベースを作成することを行って来たが,まだ不十分であるため継続して行う予定である.これは連携研究者・山本哲史と非常勤研究員を中心として遂行する.
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