研究課題/領域番号 |
16H02993
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
丑丸 敦史 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70399327)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 都市化 / 植物 / 植食生昆虫 / ネットワーク / 多様性減少 |
研究実績の概要 |
平成29年度は,兵庫県東南部(神戸,西宮,伊丹市,尼崎,川西,三田,宝塚市,猪名川町)の里山域-都市域の20地点を調査とし,畦畔上に設定したベルト調査区で行った植生調査,スウィーピング法,見つけ取り法により得られた植物,チョウ,バッタ相の定量的データを解析し,論文を二本まとめ,投稿を行った.そのうち一本は,水田周辺の都市化によって畦畔上の開花植物とチョウ類の季節性が失われることを明らかにした論文であるが,Basic and Applied Ecology誌に掲載が受理され印刷中である.もう一本は,植物とチョウ・バッタ類の種多様性が都市化により減少するメカニズムについて景観変化の直接的(生息地の縮小や分断化,二次林との接続性の消失)・間接的(土壌環境や撹乱レジームの変化や食草の減少)な影響を構造方程式モデリングにより解析した結果を論文をまとめ,現在投稿中である. また,平成29年度は,平成28年度までに送粉ネットワークデータをとった15地点について,多くの調査地にまたがって優占する在来植物12種(ウマノアシガタやサギゴケ,ノアザミ,アキノタムラソウ,ツユクサなど)について柱頭上の付着花粉数を基に評価した送粉成功に関するデータを解析し,都市化に伴うネットワーク構造の変化や送粉者の機能群多様性の変化が,植物の繁殖成功に与える影響について明らかにし,生態学会において発表を行った. さらに,平成28年度から連携研究者の山本哲史と行ってきたバッタ類の胃内容物のDNA解析も継続し,植物のリファレンスデータの蓄積を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた都市化の与える植物,チョウ,バッタ相の多様性への影響を,それぞれの分類群を機能群分け(生活史など形質による機能群分け)した後に解析することで,植物の開花やチョウ類の出現時期の季節性が失われることなどを明らかにしたこと,また特定の機能群(多年生草本や年一化のチョウ類)がより影響を強く受けることを明らかにし,それぞれを論文化し,そのうち一本の論文がBasic and Applied Ecology誌に掲載が受理された. また,畦畔上の里草地の送粉ネットワークが都市化によって受ける影響についても概ね,基礎的なデータ解析が完了し,今後論文化に移行できる. 以上は,研究計画が概ね順調に遂行できる証拠である.
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今後の研究の推進方策 |
平成30度は,都市化に伴う送粉者相の変化について行った解析結果について論文化・投稿を行う.また今回の解析から都市部における送粉者相の変化(大型のハナバチ類・チョウ類の減少)があることが明らかになり,それに伴う植物群集の花色組成の変化がみられる可能性があることがわかってきた.平成30度は都市化に伴う植物群集における花色組成の変化がみられるのかについて新たに花色データをとり検証する. さらに昨年度まで連携研究者の山本哲史と行ってきたバッタ類の胃内容物のDNA解析を継続してデータを得て,バッタ類の食草組成の変化についても解析を行い,論文化を目指す.
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