平成28年度と平成29年度に,阪神都市圏の都市域から里山域にかけて15地点の水田の畦畔植物-送粉者群集を調査対象とした収集したデータを元に,都市化に伴う送粉者(送粉昆虫)相の変化について解析を進め,都市化に伴う送粉者の種・機能群多様性の減少によって送粉ネットワークの構造が変化し,それにより生態系サービスの一つである野生植物群集への送粉サービスが低下することを明らかにした.この研究内容について現在論文をまとめている. さらにH30には、花弁色の花弁などの主要な誘引器官の反射スペクトルを測定し,ハナバチの色覚モデルを用いてカテゴリー分けを行った.解析では,都市化度(周囲1kmの人工地面積の割合)と花色カテゴリーごとの植物種数および開花量との関係,花色と送粉者相の関係について調べた.その結果,特定の送粉者機能群(ハエ目・長口吻ハナバチ)の優占度減少によって,これらの機能群に送粉されている機能形質(花色)が減少していることが示唆された.本研究は,学会発表を行なったが,その後も解析を進め,論文化を目指している. さらに連携研究者山本哲史と行ってきた数種のバッタ類の胃内容物のDNA解析を行いデータを得た.各調査地5個体ずつ解剖して消化管に残ったものをサンプルとして回収し,サンプルからDNA抽出,TrnH-psbA,ITS,rbcLの領域をPCR増幅した.まだ食草の参照DNAデータが足りなく,胃内容物の種同定までは可能ではなかった.以上のように,解析途中であるが,解析結果を回収し,都市化に伴うバッタ類の食草組成の変化について明らかにすることを目指している.
|