研究課題/領域番号 |
16H02996
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
吉川 正人 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80313287)
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研究分担者 |
白木 克繁 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30313290)
金子 弥生 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60413134)
下田 政博 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80302909)
星野 義延 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00143636)
戸田 浩人 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00237091)
植竹 照雄 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10168619)
崔 東壽 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20451982)
吉田 智弘 東京農工大学, 農学部, 助教 (60521052)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 環境緩和機能 / 土壌の理化学性 / 植物相 / 中型哺乳類 / 生物多様性 / 生息環境評価 / 花粉症対策 |
研究実績の概要 |
本研究は,都市緑地の(A)環境緩和機能および(B)生物多様性維持機能の解明と,(C)それらの生態的機能の活用方法の提案を軸とした総合研究であるが,H28年度は,このうち主に課題(A)と課題(B)を中心に研究を進めた. 課題(A)については,緑地の温度環境の特徴を明らかにするための調査を実施した.樹林下の気温と地温の経時変化を観測して,近接する気象庁のアメダス観測地点での測定値と比較することで,樹林の温度環境の緩和機能を評価した.また,樹冠下への雨量計の設置によって,樹冠による降雨の遮断量を測定するとともに,雨温が気温の影響を受けていることも明らかにした.さらに,公園内で地表の植生タイプ(芝生,踏跡雑草群落,刈取草地など)が異なる場所で,夏季の地表面付近の気温を継続観測することで,植生管理の方法が緑地の地表付近の温度に与える影響を明らかにした. 課題(B)については,都市近郊の緑地におけるタヌキ,ハクビシンなど中型哺乳類の行動圏や餌資源の調査を行い,都市緑地の中型哺乳類の生息環境としての評価や,農業・家屋被害の軽減につながるデータを収集した.とくに,これらの哺乳類の糞中から,庭園樹や街路樹として利用される樹種の果実が多く見つかり,都市緑地の植栽樹種がこれらの動物の餌資源としてなっている可能性があることがわかったのは,新しい知見である.また,東京都府中市内の15校の小学校敷地での植物相調査を行い,学校敷地の生物多様性保持機能の評価につながるデータを収集した.上記の調査の過程で,都市緑地に花粉症の原因となる外来イネ科草本が繁茂していることが多いことを見いだし,花粉症対策の基礎資料として,それらの分布や開花時期の調査も行った.さらに,都市緑地に植栽されるコナラ属樹種の成長に必要な菌根菌の感染に,土壌の水分や養分量が影響していることを実験的に明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H28年度は主に,(A)環境緩和機能の解明,および(B)生物多様性維持機能の解明に関するデータ収集を中心に実施することを計画していたが,おおむね順調に進展しているといえる.緑地の熱環境や雨水動態の調査,動物の生息環境や植物の多様性に関する調査などは,順調にデータの蓄積が進んでおり,H29年度までに解析に必要なデータがそろう見込みである.とくに動物の生息環境評価に関しては,以前からの成果も含めて,いくつかの論文執筆や学会発表に至る成果が得られた.土壌の理化学性の調査や土壌動物の調査については,本格的な調査の開始までには至らなかったが,調査地の選定と試料採取は終了しており,大きな遅れではないといえる.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,都市緑地の(A)環境緩和機能および(B)生物多様性維持機能に関するデータ収集を行う.そのうえで,これらの情報を利用して,(C)生態的機能の活用方法の提案に関しての研究に発展させていく予定である. 課題(A)については,夏季の地表付近の熱環境の効率的な測定方法の開発を行うとともに,前年度得られた地表植被のタイプによる温度環境の違いのデータを利用して,局所的な熱中症リスクの推定を行う予定である.また,造成年代がわかっている埋立地の緑地を対象に,都市土壌の生成と理化学性に関する調査・分析を行う. 課題(B)については,小中学校敷地の植物相調査に基づく生物多様性保持機能の評価,都市緑地に分布する外来イネ科牧草の花粉飛散量の実測とそれを抑制するための植生管理方法の検討,中型哺乳類の餌資源供給減としての都市緑地の評価,などを行う.また,課題(A)から得られた地表付近の温度環境や土壌理化学性のデータと関連づけて,地表性昆虫や土壌動物の生息環境としての評価を行う. 上記(A)(B)の成果をまとめつつ,課題(C)の生態的機能の活用方法についても検討を進める.都市緑地利用者の行動観察とアンケート調査を実施し,緑地の保全管理と関連づけたレクレーション・プログラムの考案に着手する.
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