研究課題/領域番号 |
16H02997
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
由里本 博也 京都大学, 農学研究科, 准教授 (00283648)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | メタノール酵母 / 遺伝子発現 / メタノール資化性細菌 |
研究実績の概要 |
1.メタノール酵母の有用形質を制御する遺伝子機能の解明とその活用 メタノール酵母において強力なメタノール誘導性遺伝子発現に特化された転写制御機構を明らかにするため、前年度に引き続き、転写制御因子と情報伝達関連因子の機能解析を行った。メタノール誘導性遺伝子発現はエタノールの共存によって抑制されるが、この抑制がエタノール分子そのものではなく、エタノールからアセチルCoAへの代謝が関与する抑制機構であることを見出した。また、メタノール培養時などにストレス応答に働く情報伝達因子Hog1の新奇機能を明らかにした。一方、転写因子については、Hap複合体の核移行シグナルの決定や、メタノール誘導性転写因子のプロモーター領域の決定とDNA結合についての解析を進めた。メタノール酵母における異種タンパク質生産では、分泌効率を向上させるための培養法や宿主株の改良を進めた。 2.メタノール変換反応系の構築 前年度に引き続き、C1微生物の代謝系を活用したメタノールへの新規バイオプロセス変換法の開発を進めるとともに、バイオプロセスにより生じたメタノールを検出するための酵母メタノールセンサー細胞の構築と検出条件の最適化を行った。 3.植物共生メタノール資化性細菌の活用 前年度に引き続き、Methylobacterium細菌のメタノール代謝特性や植物上での定着・生存に必要な細胞機能の解析を進めた。これまでに植物試料から単離したMethylobacterium属細菌の多くが要求するビタミンB5について、その生合成前駆体の要求性を調べ、植物上では複数の前駆体を利用している可能性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メタノール誘導性遺伝子発現に関わる転写因子やシグナル伝達因子の解析については、新たな代謝経路の関与や制御因子の新奇機能の発見もあり、当初の計画以上に進展している。メタノール変換系の構築については、メタノールの検出評価系を新たに確立できたが、バイオプロセスによるメタノール生成効率の向上には至っていない。植物共生メタノール資化性菌の解析については、概ね計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
メタノール誘導性遺伝子の転写制御機構の解明とその活用については、前年度に引き続き、メタノール感知因子から転写因子へのシグナル伝達についての解析を重点的に行う。メカニズムの解明に留まらず、新規宿主による有用タンパク質の高効率生産を達成したい。新規メタノール変換反応系の構築、および植物共生メタノール資化性菌については、当初の計画通りに進める。
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