| 研究課題/領域番号 |
16H02999
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| 研究機関 | 香川大学 |
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研究代表者 |
山田 佳裕 香川大学, 農学部, 教授 (30297460)
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| 研究分担者 |
中野 孝教 総合地球環境学研究所, 研究部, 名誉教授 (20155782)
申 基チョル 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 助教 (50569283)
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| 研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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| キーワード | 河川 / 水安定同位体比 / 水循環 / 有機物汚濁 / 灌漑 |
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| 研究実績の概要 |
有機物汚濁の解析には、有機物の動きと共に、水の動きを知る必要がある。水安定同位体比は、主に水が蒸発する際に変化し、水源の地理条件や水の滞留時間に応じた値を示す。本研究では、この性質を河川の水・物質動態の解析に利用する。流域に貯水地が多く、灌漑が効率的な瀬戸内地域は、水源に応じた幅広い値の分布が期待出来る。今年度は、香川県の主要な河川である新川で、定期的にδD, δ18OやPOCを測定し、水及び親生物物質の動態について解析した。
新川流域で最大規模のため池由来の水の新川への寄与率を、d値を基準に計算すると、最も寄与率が大きい8月には82％で、ため池（8.32 ｍg/L）流入前後でPOCが1.01 ｍg/Lから4.86 ｍg/Lに上昇しており、ため池由来の水が河川の有機物の大きな供給であることが分かった。
灌漑用水が取水され、水量が大きく減少する地点でも、d値は大きく変動した。取水の前後で、2.5‰から9.0‰に上昇した（８月）。このときのPOCは4.84 mg/Lから0.52 mg/Lへと大きく減少していた。元の河川水が取水の影響で減少し、他の経路から流入した水に取って代わられたと考えられる。すなわち、同じ河川であるが、水の起源や有機物等の物質の起源の点から全く異なる河川であるといえる。
さらに、その下流では、支流の合流後、d値が9.0‰から3.9‰に大きく減少ており（支流4.6‰）、POCも0.52 mg/Lから2.71 mg/Lへと上昇した。新川の中流域で取水された水は、高低差により当該支流に注ぎ込む。新川は一度、質的に異なる河川になるが、途中で取水された上流の水が回帰しているのである。
以上のことから、現在の分断化された河川は、ため池の放流や取水や灌漑用水の回帰といった多様性があり、このような複雑なメカニズムの解析に、水の安定同位体比等のトレーサーが有効であることがわかった。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度のテーマは「陸水域において水・物質循環のトレーサーとなりうる物質を測定し、高度な水利用が流域の水・物質循環に与える影響を解析する」であり、当初は、δD, δ18Oをはじめ、流域の水動態及び親生物物質の解析を目的とした河川物質マップを作成であった。しかしながら有機物濃度が高くなる夏から秋にかけて、断続的に雨が降ったことや主要河川の下流で、工事が行われていたことから、２年目の調査であった定点調査を本年に繰り上げて行った。広域調査の結果をもとに、対象河川を絞る予定であったが、これまでの研究から、効果的な河川の選定が可能であり、最も流域面積が広く、有機物汚濁の進行した「新川」を対象に行った。水資源が少なく、河川水が効果的に利用されている流域での水・物質循環の多様性について解析するとともに、水安定同位体比等のトレーサーが有効にであることを確認した。
広域調査はH29年度早々の５月に行う予定である。
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| 今後の研究の推進方策 |
先延ばしした広域調査はH29年度早々に行う予定である。
H29年度の主要テーマは「主要流域と吉野川流域の水・物質の海への供給パターンから、水資源の乏しい瀬戸内海流域の河川から海域への物質の供給について比較・解析する」であり、予定通り行う。
H29年度からH30年度には、陸水域の調査と平行して、陸域から海域への物質供給の時系列パターンについて調査・解析を行う。河川水中の有機物濃度が高い新川と対照の吉野川で水を採取し、トレーサとなりうる各種物質の安定同位体比を測定する。加えて、河口堰からの流出水量を見積もるため、香川県の観測水位から流量を算出する。灌漑期、非灌漑期、渇水期、洪水時など、人間活動のイベントや気象によって、河川からの流出量が変動した時に海へ供給される物質の量と質がどのように変化するかを有機物動態に注目しながら解析する。
陸水域の物質の質とそれを規定する要因及び海域への物質供給のメカニズムを解析し、自然的（降水量）、人為的（利水）水文環境が物質循環に与える影響をシミュレーションする。効果的な水利用の結果として起こる河川の有機物汚濁による海域食物連鎖の撹乱を念頭におく。担当は観測、化学分析は山田と申、解析は山田が行う
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