研究課題/領域番号 |
16H02999
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
山田 佳裕 香川大学, 農学部, 教授 (30297460)
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研究分担者 |
中野 孝教 総合地球環境学研究所, 研究部, 名誉教授 (20155782)
申 基チョル 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 准教授 (50569283)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 河川 / 植物プランクトン / ため池 / 堰 / 有機物 |
研究実績の概要 |
今年度は、流域から河川に供給された有機物の河川内での動態解析に資するため、ため池が合流し、河川内の有機物が上昇する地点において、河川水中の有機物の質的、量的な情報を得るための調査を行った。 δ18O-δDの傾きは、ため池合流前の上流で6.77、合流後の下流で6.58、ため池で6.26で蒸発の影響を受けており、これらの水は流域に長時間滞留していると考えられた。期間中のクロロフィルaの平均は、上流で、31±37 μg/L(n=51)、下流で211±169 μg/L(n=51)、ため池で169±153 μg/L(n=50)であった。POCもクロロフィルa同様、上流で829 ±465 μg/L (n=51)、下流で3.24×103 ±2.02×103 μg/L(n=51)、ため池で7.00×103 ±6.63×103μg/L(n=50)であった。ため池の種構成は下流と類似しており、優占種の細胞数は上流で平均1.73×103 ±2.04×103 cell/ml、下流で平均1.06×104±1.76×104 cell/ml、ため池で平均1.03×104 ±7.95×103 cell/mlであった。PO43--Pは上流で、47 ±39 μg/L、下流で14± 18 μg/L、ため池で概ね検出限界以下であった。 下流の灌漑期にクロロフィルa濃度が高くなり、植物プランクトンの種組成がため池と類似していたのは、ため池からの放流に伴い供給される植物プランクトンが、栄養塩が豊富な河川で増えたためと解釈できる。植物プランクトンはため池から供給されるだけでなく、堰による止水域でも増加していることが示された。同様の結果は河口堰の止水域でも見られ、河川内に多く設けられている堰で、植物プランクトンが増加しているものと考えられる。河川から海域に供給される栄養塩等の物質組成にも影響していると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野外調査と化学分析についてはほぼ予定通り進行している。河口域の一次生産については週1度の観測を1年間継続して行っており、予定していたデータは得られた。河川流量には水位データは得ており、流量換算について今年度検討する。今年度はこれらを基に海域への物質供給をシュミレーションする。想定外のこととして、昨年度は夏季に対象河川で河道の工事が行われてたため、再度の調査が必要になった。これについては、今年度の調査と並行して行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、陸域から海域への物質供給の時系列パターンについて調査・解析を行う。調査は、河川水中の有機物濃度が高い新川で行う。今年度は、河川の止水域における有機物生産の測定を明暗ビン法で行い、河川内の植物プランクトンによる一次生産量を見積もり、流域の有機物動態の解析を行う。河川下流における高い有機物濃度の原因について解析し、河口域に運ばれる有機物のを質的に捉える。一方で、河口堰からの流出水量の見積りに関しては昨年度も行ったが、長期間の河川工事で河川水の流れが不規則で、十分なデータが得られなかったので、今年度も測定を継続して行う。渇水期には魚道からの流出が主になるため、この算出法についても検討する。昨年度同様、灌漑期、非灌漑期、渇水期、洪水時など、人間活動のイベントや気象によって、河川からの流出量が変動した時に海へ供給される物質の量と質がどのように変化するかを有機物動態に注目しながら 解析し、海域への流出量を見積もる。また、対照として、瀬戸内海地域では比較的水資源が豊富な西条平野において同様の調査を行う。 河川から供給された有機物の海岸域での動態についても炭素、窒素安定同位体比を指標にして解析する。
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