研究課題/領域番号 |
16H03005
|
研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
川邉 みどり 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (80312817)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 沿岸域管理 / 地域マネジメント / 海洋利用管理 / 関係者の対話 / 合意形成 / アクションリサーチ / ステークホルダー・エンゲージメント |
研究実績の概要 |
1.文献調査:沿岸域管理の課題を解決するための『関係者の対話』にかかわる理論・分析・評価手法を整理統合し、枠組みの基本をつくる。新たな海洋利用事業にかかわるコンフリクトマネジメント:条件不利な離島などの地域において漁業は基幹産業である。だが、近年は、海洋レクリエーションに加えて、沖合洋上風力発電のような、従来は存在しなかった事業が展開されている。こうした事業計画においてステークホルダーとのコンフリクトを回避し互恵的なものにする、ステークホルダー・エンゲージメントについての枠組みを構築した。 2.アクション・リサーチの実践:おもに次の4つをおこなった。 ①福島県浜通り地方の復興に向けた対話:2019年9月海外から研究者を迎えて相馬双葉漁業協同組合(相馬市)において、相双漁協漁業者および、福島県水産業普及指導員の方々と相双漁協・国際ワークショップ「相馬の海と魚を語ろう」を開催、その前後に浜通り地方での現地調査を実施した。 ②沖縄県におけるサンゴ保全再生についての調査研究をおこなった。 ③歯舞地区の地域マネジメント:北海道根室市東端にある歯舞地区は辺境の条件不利地域にもかかわらず高い経済パフォーマンスを示す。その内発的発展の鍵を握る漁業協同組合が中心となって進める各種事業の経緯と成果について調査研究を行なった。 ④東京湾沿岸域管理の基礎的情報として、東京湾品川浦漁業の変遷について学ぶ、漁業者へのグループインタビューや、現在の湾環境について学びながら対話をおこなう参加型ワークショップ、体験型活動の実践を担う博物館の課題抽出と共有を図る懇談会を実施した。東京海洋大学江戸前ESD協議会のホームページの充実をはかることで、disseminationに努めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
枠組み構築の「評価」部分については、今後強化の必要がある。 実践的研究であるアクション・リサーチについては、COVD19の蔓延の状況が改善されなかったことから、予定していた国内外の現地調査と対面ワークショップを実施できなかった。その代替として、国内については、オンライン・インタビュー、オンライン・ワークショップなどをおこなったものの、当初想定していたような現場あるいは対面によるほどのデータ収集をおこなうことは困難であった。 また、「海洋空間計画」がさかんにおこなわれている北ヨーロッパ(ノルウェー、スコットランド、ドイツなどを想定)における海洋資源環境利用の調整にかかわるしくみについての調査は渡航が困難であったことから断念した。
|
今後の研究の推進方策 |
沿岸域管理における「関係者の対話」の枠組み構築において、とくにまだ不十分な「評価」の部分については「参加型評価」の手法と課題に関する既往研究レビューをとおして整理し、論考としてまとめる。同時に、アクションリサーチの分析に、構築した枠組みを活用する。 アクションリサーチについては、COVID19による規制に緩和の兆しが見えることから、今まで実施できなかった遠隔地の現地調査(おもに北海道道東、福島県浜通り地方、沖縄県久米島を想定している)および、参加型ワークショップ(可能であれば対面)をおこない、ナラティブ・データの補完をする。また、東京湾に関しては、博物館との連携強化を図り、沿岸域管理の基盤である「体験型教育」の連携を具体的に提案したい。 広報活動については、東京海洋大学江戸前ESD協議会のホームページの充実をはかると同時に、別途なんらかの媒体をとおして情報を発信するプラットフォームをつくる。
|