研究課題/領域番号 |
16H03006
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
竹内 憲司 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (40299962)
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研究分担者 |
佐藤 真行 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (10437254)
西谷 公孝 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (30549746)
新熊 隆嘉 関西大学, 経済学部, 教授 (80312099)
溝渕 健一 松山大学, 経済学部, 准教授 (90510066)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 再生可能エネルギー / 環境イノベーション / 重力モデル |
研究実績の概要 |
環境技術に関するイノベーションがもたらす経済的インパクトについて、計量経済学的方法を用いた実証的な研究をおこなった。風力発電と太陽光発電に関する技術について、特許取得数のデータと、輸出額との相関を検討した。特許取得数は世界規模のデータベースであるPATSTAT、輸出額はOECDによる詳細な貿易統計であるICTSを用いて、OECD27カ国および中国の1996年から2010年にかけてのデータを収集した。重力モデルを用いてOECD27カ国間の貿易フローを分析した結果として、再生可能エネルギー技術の発展が同技術に関する製品輸出の拡大と関連していること、ただしこれら2つの間の関連性は太陽光発電分野に関しては風力発電分野よりも弱いことが明らかになった。さらに中国のデータを加えた分析を行い、得られた結果の頑健性を確認した。本研究の結果、特許取得数で見た環境技術の発展は、こうした特許を取得している国からの環境関連製品の輸出拡大に影響を与えるものの、製品の種類によってはその影響は小さいことが明らかになった。このことは環境技術開発に対する支援政策を実施する際、その経済的リターンが貿易の拡大という形で実現する製品とそうでない製品があり、これを見極めた政策デザインが必要であることを示唆している。また本研究では、中国のデータを加えて分析を行ったことで、急速な経済発展を遂げる国からの再生可能エネルギー製品の輸出が、必ずしも技術的な発展を伴わない形で実現していることを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では環境関連技術に関する技術革新と貿易フローについて大規模なデータベースを構築し、これに基づいた計量経済学的研究を実施している。現在までに再生可能エネルギー、具体的には太陽光発電と風力発電に関する国レベルの特許と輸出についてデータベースを構築することに成功し、OECDおよび中国のデータを用いた実証研究を実現した。また、再生可能エネルギーに関する支援策についても各種文献を元に整理を行い、各国レベルでどのような政策が実施されてきたかについてデータベースを構築した。これに基づいて、各種政策が再生可能エネルギー製品の輸出拡大に与える影響を詳細に分析することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではこれまで、再生可能エネルギー製品を対象として技術革新と貿易フローの関わりを検討してきた。その過程で環境関連技術の量的な拡大はある程度把握することができたものの、その質的な水準が高まっているかどうかについては十分な検討が行われてこなかったと言える。さらに、環境技術の対象が再生可能エネルギー製品だけにとどまっており、結果の一般性について十分な検討が行われてきたとは言えない。そこで今後の推進方策として環境関連技術の質的な向上について把握する方法を検討し、これに基づいた技術普及の経路について検討を行うこと、さらに再生可能エネルギー製品だけに止まらず、次世代自動車など他の環境関連技術に関するデータを用いた実証研究を行うことを検討中である。
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