研究課題/領域番号 |
16H03015
|
研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
永井 由佳里 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (80320646)
|
研究分担者 |
松前 あかね 佐賀大学, 芸術地域デザイン学部, 客員研究員 (50707859)
吉高 淳夫 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (60263729)
前川 正実 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特任准教授 (80753920)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 創造性 / アクティブラーニング / グループワーク / デザイン / 教育工学 / 評価 / 集合知 / ファシリテーション |
研究実績の概要 |
現代社会で活躍するために様々な側面で創造性が求められているが、なかでも他者との協働によるグループワークでの創造性がイノベーション創出に結びつくと期待されている。「デザイン思考」が高等教育のみならず、社会や産業からも注目されている所以である。しかし、その活動をどう評価すればよいのかについては、曖昧なままである。 本研究は、グループワークでのデザイン力の強化とそのリーダーシップを発揮できる人財の育成を目指して実施されている高等教育におけるデザイン思考やワークショップでの創造的実践をどのように評価すべきかという問題を提起し、その手法を提案することを目的としている。そのために、ルーブリックによる尺度評価を参照した自己評価および他者評価の方法を検討した。昨年度までの研究成果を基盤に、グループワークを実践し、その評価を行うとともに、国内外の関連する研究を調査し、考察を行った。 日本デザイン学会や認知科学会での研究発表、および、国際会議での研究発表とワークショップを行って開発した評価法の普及に努めた。グループワークを主とした高等教育カリキュラムに向けた「イノベーションデザイン論」を提唱し、日本デザイン学会誌の特集号を刊行した。国際会議では基調講演も行い、グループにより創造性についての総合的論考を行った。その成果の一部について、国際ジャーナルに掲載し、また、T. Lubartら創造性に関する第一線の研究者らとともに書籍の章としてSpringerより出版した。デザイン思考は現在様々な分野で注目を集めているが、具体的にどのようなプロセスであり、どのように評価すべきかが問題であったが、本研究の成果により、その問題の解決に一歩近づいたと言える。行動観察や談話解析においては、最新技術を導入し、合理化を進めるなど、将来的な普及に向けて開発を重ねた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「デザイン力」として総合される実践的な創造性をとらえ、その評価方法を構築するために、関連する手法を精査し、体系的に議論・検討を重ねた。また、今日の目覚ましい情報技術の展開に注目し、センサリング技術等、最新のテクノロジーを駆使した行動変容を捉える方法も合わせて検討した。申請時には未開発であった技術も普及の一歩手前まで発展しており、本研究での接合も可能性が見込まれる。 グループワークの評価について、国際的に著名な研究者と国際会議等でディスカッションする機会を得ることができ、検討を重ねることで、より使いやすく合理的な方法として将来普及する見込みが高まっている。また、mini-cという、これまでは議論することが困難であった創造性発現の前段階についても本研究の独自性としての意義が明確になった。mini-cについての研究を国内外で発表したことにより、外部からの協力者を得ることができ、調査分析が予定より早く進み、専門的学術誌に論文が掲載されるに至っており、当初の計画より6か月程度早い進捗である。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおり順調に研究が進んでおり、実践を重ねることで精度が高くなっている。さらに文献研究からの知見が強化されたことで、適応範囲も広がっている。プロセス評価とプロダクト評価の軸を明確に区分することにも成功し、評価手法の構造も整理された。今後の方針として、特に海外事例との対応を進める所存である。 mini-cをはじめとする創造性の各段階についての知見が深まったことから、それを活かしたグループワークのプロセス評価をより詳細に検討することが可能となった。そのため、特に海外での研究成果発信を重点的に実施し、創造性評価の基本的手法としての普及を目指したい。グループワークにおいては、日本語話者によるものだけでなく、英語話者による実践も行い、ファシリテーションも工夫を重ねる方針である。 加えて、本研究の成果を国際的に拡げるために図書の発行も検討する。
|