研究課題/領域番号 |
16H03026
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
鷹股 亮 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (00264755)
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研究分担者 |
森本 恵子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (30220081)
杉本 直俊 金沢大学, 医学系, 准教授 (80272954)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エストロゲン / 摂食行動 / 光環境 / リズム / 環境温度 |
研究実績の概要 |
本年度も光環境と摂食リズム調整がエストロゲン欠乏ラットの摂食行動に及ぼす影響と、低温環境時の摂食行動の変化に及ぼすエストロゲンの影響を明らかにするための基礎実験を行った。更に、うつ様行動の評価としてスクロース嗜好テストを行った。 卵巣摘出したメスラットを、エストロゲン補充(E2)群とコレステロール補充(Veh)群の2群に分け、これらのグループを更にラットの休眠期である明期に摂食をさせない摂食制限(RF)群と自由摂食(AF)群に分けた。AF条件では、E2群ではVeh群よりも摂食量が少なく、エストロゲンの明期に特異的な摂食抑制が確認された。E2群では、AF群とRF群に間に一日摂食量、体重増加に差が認められなかったが、Veh群では、AF群に比べてRF群では一日摂食量、体重増加が減少し、一日摂食量はE2群との差がなくなった。この結果はエストロゲン欠乏による摂食量の増加が、日内摂食パターンの乱れによることを示す結果である。本年度は、更に恒常暗(DD)環境でも同様の実験を行い、光環境の影響について検討した。DD環境に曝露するとAF条件では、E2群において一日摂食量が増加した。AF条件と比較して、RF条件では、E2群、Veh群のいずれにおいても一日摂食量が有意に低下した。以上の結果は、エストロゲンによる摂食抑制作用が光環境に依存するが、明期摂食制限を行うことにより、光環境に依存せずに摂食量および体重増加を抑制できる可能性が示めされた。 また、本年度の結果よりエストロゲンがスクロースの嗜好性を高めることが明らかになった。この嗜好性の上昇と抑うつ状態との関連については今後の研究が必要である。 更に、温度環境が摂食行動、睡眠・覚醒、うつ様行動に及ぼす影響を明らかにするための実験を更にオスラットを用いて行った。低温環境では摂食量が増加するが、これには末梢の温度受容器が関与しないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、光環境がうつ様行動、不安様行動に及ぼす影響に関する充分なデータが得られなかった。 しかし、うつ様行動の評価法として、スクロース嗜好テストを行い、エストロゲンの効果が観察された。スクロース嗜好性とうつ様行動との関連について更に検討する必要がある。 摂食行動に及ぼす温度の影響については、本年度はオスラットを用いた基礎的な実験を行った。まだ、摂食行動と温度との関連のメカニズムについては不明な点が多いが、この実験で得られた結果はすぐにメスラットの摂食行動に及ぼすエストロゲンと温度の影響の実験への応用が可能である。
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今後の研究の推進方策 |
光環境がエストロゲン欠乏ラットの行動・生理機能に及ぼす影響について引き続き検討を進めるととも温度環境の変化によって引き起こされる摂食行動や活動リズムの変化に及ぼすエストロゲンの影響について明らかにし、エストロゲンによる摂食行動、うつ様行動の変化に及ぼす光・温度環境の影響とそのメカニズムを明らかにしていく。強制水泳、オープンフィールドテストに加えて、新たにスクロース嗜好テストをうつ様行動の評価法として用い、より信頼性の高いデータの取得を目指す。 また、これまでの実験結果を踏まえ、エストロゲンと光環境が各種行動に及ぼす影響の中枢メカニズムを明らかにする実験を行っていく。 更に、これまではオスラットを用いて温度環境の影響を検討してきたが、今後は温度環境とエストロゲンが摂食行動、睡眠・覚醒、うつ様行動に及ぼす影響を明らかにするための実験を行う。
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