研究課題/領域番号 |
16H03034
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
後藤 直宏 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (60323854)
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研究分担者 |
別府 史章 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (10707540)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 機能性食品 / 魚油 / 長鎖モノエン酸 / 多価不飽和脂肪酸 |
研究実績の概要 |
魚油はDHAやEPAなどのn-3系長鎖多価不飽和脂肪酸(n-3PUFA)を特異的に含むことを特徴とする油脂である。n-3PUFAは血中中性脂肪低下、肝脂肪低下などの保健機能を有することから、魚油は機能性油脂として注目を浴びてきた。ところが近年、魚油のもう1つの特徴として知られる長鎖モノエン型脂肪酸(LC-MUFA、二重結合数1つの脂肪酸)にも肝脂肪や体脂肪蓄積抑制能などの保健機能が備わっていることが明らかにされた。そこで本研究では、炭素数18、20、22の長鎖モノエン型脂肪酸(LC-MUFA、二重結合数1つの脂肪酸)を有機合成し、LC-MUFAの構造の違いと保健機能の関係を精査、さらにn-3系多価不飽和脂肪酸(n-3PUFA)との相乗作用を明らかにすることで、「魚食」のさらなる高付加価値化を目的として研究を開始した。平成28年度は、炭素数20のLC-MUFA異性体(c5-20:1、c7-20:1、c9-20:1、c11-20:1、c13-20:1、c15-20:1)および炭素数22のLC-MUFA異性体(c7-22:1、c9-22:1、c11-22:1、c13-22:1、c15-22:1)を100 mg以上確保することを第1の目的とし、各種LC-MUFAの有機合成を行った。結果、天然に存在する全ての種類のLC-MUFAを100 mg以上確保するに至った。さらに合成したLC-MUFAを標準サンプルとして海洋性魚介類中におけるLC-MUFA異性体分布をGC-FIDを用いて精査した。結果、赤道周辺に生息する魚介類にはLC-MUFAの存在量が少ないことを明らかにした。平成29年度は、合成したc5-20:1、c7-20:1、c9-20:1、c11-20:1、c13-20:1、c15-20:1を3T3-L1細胞へ添加し、脂質合成系および脂質燃焼系の酵素活性、mRNA発現量、および各種脂質クラス蓄積量を比較した。結果、c15-20:1は他のc-20:1と比較して有意に脂質蓄積能を低下させ、これはc15-20:1が脂質合成を低下させ、さらにβ酸化を惹起した結果と考察した。これらの結果から、LC-MUFA中二重結合存在位置は脂質代謝へ影響を与えることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞試験により炭素数20のLC-MUFA異性体(c5-20:1、c7-20:1、c9-20:1、c11-20:1、c13-20:1、c15-20:1)が有する保健機能を確認でき、さらに現在、炭素数22のLC-MUFA異性体(c7-22:1、c9-22:1、c11-22:1、c13-22:1、c15-22:1)の研究も進めている。今後、この結果を元に動物試験へと移行する予定である。このような現状より、「概ね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、炭素数22のLC-MUFA異性体(c7-22:1、c9-22:1、c11-22:1、c13-22:1、c15-22:1)、さらには炭素数18のLC-MUFA異性体13種類(c4-18:1~c16-18:1)の細胞試験を行い、その結果を元に、脂質合成能を低下させた異性体の動物試験を実施する予定である。
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