研究課題
本研究の目的は、スルフォラファン配糖体(SGS)によるエネルギー代謝調節機構と肥満関連疾患の予防改善効果を明らかにすることである。本年度は、野生型C57BL/6J(WT)マウスを高脂肪食、またはSGS混合高脂肪食で14週間飼育し、間接熱量計等を用いて代謝表現型を解析した。また、肝臓、脂肪組織に浸潤・集積するマクロファージの量と極性(M1/M2)をフローサイトメトリーにより免疫学的に評価した。WTマウスにおいて、(1)SGSは摂餌量を変えることなく高脂肪食による体重増加を15% 抑制した(p <0.01)。さらに、SGSにより皮下脂肪、及び精巣上体周囲脂肪(eWAT)におけるUcp1の発現が亢進し、O2消費量とCO2産生量から算出したエネルギー消費量が12%増加した(p <0.01)。(2)SGS群の空腹時血糖とインスリンは、高脂肪食群に比して低値であり、インスリンによる肝臓、eWAT、骨格筋におけるリン酸化Aktの増加を伴っていた。(3)肝臓において、SGSは中性脂肪と遊離脂肪酸の蓄積を減少させ、脂肪肝を改善した。また、SGSによってTNF-α、及びMCP-1のmRNA発現は%低下し、炎症シグナル(JNK、Erk)が抑制された。さらにSGS群における肝臓中のマクロファージ数は対照群に比べて44%減少し、中でも炎症性M1(CD11c+CD206-)は39%減少していた。一方、抗炎症性M2(CD11c-CD206+)は67%増加しており、その結果SF群のM1/M2比が0.2倍へと低下し、M1から M2優位へと肝臓マクロファージの極性シフトを認めた。また、eWATにおいてもSGSにより、マクロファージの極性がM2優位にシフトしていた。以上より、SGSは、高脂肪食による肥満形成、脂肪肝、慢性炎症、及びインスリン抵抗性の発症を抑制することが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
SGSの新たな生体調節機能として抗肥満作用とその作用メカニズムを新たに見出し、論文投稿中であるため。
SGSの腸内細菌叢への作用を介した、肥満抑制および代謝改善効果について検討する。
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