研究課題/領域番号 |
16H03036
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
西村 直道 静岡大学, 農学部, 教授 (10341679)
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研究分担者 |
井上 亮 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (70443926)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 水素分子 / 大腸発酵 / 腸内細菌叢 / 酸化ストレス / 細菌叢移植 |
研究実績の概要 |
本研究では、大腸における安定的な高水素生成を可能にするため、高水素生成に必要な腸内細菌叢プロファイルを解明する。また、その高水素生成細菌叢を移植することにより安定した水素供給が可能な大腸内環境を実現することを目的とした。そこで高水素生成を実現する腸内細菌叢プロファイルを調べ、そのような細菌叢をラットに移植し、定着させ、ラット高水素生成の安定化を実現するかどうかを調べた。 1)水素生成能の異なるラットにおける酸化ストレス抑制の違い 大腸水素生成を促進する難消化性糖質をラットに与え、呼気と放屁に排出される水素量にもとづき高水素生成型ラットと低水素生成型ラットに分別した。これらのラットに肝虚血-再灌流処置により酸化ストレスを与えた結果、高水素生成型ラットほど肝臓における酸化ストレスおよび酸化障害の軽減が認められた。 2)高水素生成をもたらす腸内細菌叢プロファイルの明確化と高水素生成細菌叢の移植による高水素生成ラットの作製 難消化性糖質をラットに与え、同様に高水素生成型ラットと低水素生成型ラットにわけ、盲腸内容物から水素生成能の異なる細菌叢カクテルを得た。高水素生成型ラットを安定的に得る目的で、高水素生成型細菌叢を低水素生成型ラットに移植し、先の細菌叢カクテルとともにこれらのラットの腸内細菌叢プロファイルと水素生成能を解析した。低水素生成型ラットの水素生成能は高水素生成型細菌叢の移植により有意に上昇し、高水素生成型ラットとほぼ同等となった。その細菌叢プロファイルは高水素生成型細菌叢と類似した。一方、生理食塩水を投与した低水素生成型ラットの細菌叢プロファイルは低水素生成型のままだった。また、水素生成細菌と水素利用細菌の占有率により正味の水素生成量が決まることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画したものから、細菌叢移植実験に遅れを生じたため、繰越して鋭意実施した。その結果、順調に成果が得られたため、当初計画案に準ずるものが最終的に得られた。そのため、概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
大腸水素がアスコルビン酸と同様に電子供与体として寄与する可能性を検証するため、アスコルビン酸合成不能ラット(ODSラット)を用い、難消化性糖質摂取による高水素生成がビタミンEの再生を促進し、酸化ストレスの軽減に寄与する可能性を調べる。また、ODSラットの細菌叢が低水素生成タイプの場合、高水素生成細菌を移植し、高水素生成化を行う。 1)難消化性糖質を与えたODSラットの水素生成変動とビタミンE再生 ODSラットに難消化性糖質としてフラクトオリゴ糖を与え、水素生成変動を検証する。同時に盲腸内細菌叢の変化を調べる。また、各組織におけるビタミンE濃度の変化を調べる。 2)難消化性糖質を投与した高水素生成ODSラットのビタミンE再生と酸化ストレス軽減 フラクトオリゴ糖を与えた高水素生成ODSラットを用い、大腸水素が脂肪組織におけるビタミンE再生に与える影響とその組織における酸化ストレス変動を明らかにする。
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