研究課題/領域番号 |
16H03040
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
榊原 啓之 宮崎大学, 農学部, 教授 (20403701)
|
研究分担者 |
芦田 均 神戸大学, 農学研究科, 教授 (90201889)
榊原 陽一 宮崎大学, 農学部, 教授 (90295197)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 次世代伝承性 / フラボノイド / ケルセチン / 機能性 / マウス |
研究実績の概要 |
野菜や果物などの植物性食品には,ポリフェノールの一種であるフラボノイドが豊富に含まれている。近年の研究において,ある種のフラボノイトドを日常的に摂取することが,肥満や糖尿病などの生活習慣病の予防につながる可能性が報告されている。一方,母体が摂取したフラボノイドが微量ではあるが母子間移行するにもかかわらず,母子間移行したフラボノイドが,胎児・乳児の生理機能に与える変化と,成長に伴って表現してくる肥満などの症状への影響とを結び付けた研究は皆無である。本研究では,母体のフラボノイド摂取が胎児・乳児体内の生理機能に与える作用を解析し,この時に受けた変化による発達期の糖や脂質などの代謝系および行動に対する影響と,肥満や糖尿病などの疾患リスクとの関連を明らかにすることを目的に研究を推進している。本プロジェクトでは,これまでの研究において,代表的なフラボノイドの一つであるケルセチンを被験物質として用い,1)妊娠期間中にケルセチンを摂取した母マウスから生まれた次世代マウスの体重増加量は,コントロール食を食べた母体から生まれたマウスと比べて抑制されることを見出している。さらに平成29年度は,以下の成果を得た。 2)妊娠期間中の母体がケルセチンを含有した食事を摂取しても体重に対する影響は見られない。 3)出産後の母マウスの血中脂質量は低下する。乳児マウスの血中脂質量についても同様の傾向を示す。母マウスおよび乳児マウスの肝臓中トリグリセリド代謝を司っている遺伝子の発現量が上昇する。 4)測定した9種類の血中サイトカイン類の中では,IL-1αのみが,ケルセチンを摂取した母マウスより生まれた乳児マウスにおいて顕著な低下傾向を示した。 以上の結果より,母マウスが摂取したケルセチンの作用が次世代に伝わる可能性が示唆されたが、今後,より詳細な研究が必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の最終目的である「母体が摂取したフラボノイドの機能性が次世代に与える影響」の解明へ繋がる成果の一つとして,代表的なフラボノイドの一つであるケルセチンを母体が摂取することが次世代マウスへ影響を与えることを見出している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度に実施した研究の結果,C57BL/6マウスの交配妊娠率が低いことが問題の一つとしてあげられた。そこで,次年度は系統を交配妊娠率が比較的高いと言われているICRマウスを用いて,これまで得た成果の再現性をとる。次に, (1)食事由来フラボノイドの母子間移行性評価: 妊娠期間中にフラボノイドを摂取した母体から胎児を摘出し,摂取フラボノイドの 母子間移行性を追跡する。 (2)胎児・乳児の生理機能に対する作用解析:母子 間移行することが報告済みのフラボノイド,具体的にはケルセチンやカテキンを用いて試験をおこなう。妊娠期間中にフラボノイドを 摂取させた母体中から胎児を摘出し,肝臓を試料として脂質・糖質代謝系に及ぼす影響をリアルタイムPCR等を用いて評価するとともに,摂取フラボノイドの母子間移行性を検証する。 (3)成長に伴った継時的な生体影響評価:母子間移行するフラボノイド画分を含んだ食餌を摂取した母体から出生した子どもに、発達とともに表現してくる変化を解析する。具体的には、離乳したマウスを、通常の精製食あるいは母体が摂取したフラボノイド画分を含んだ食餌を継続的に摂取させ、継時的にサンプリングをおこない,(2)と同様の評価試験を実施する。また疾病への耐性について も評価する。
|