本研究では、capsaicinとcinnamtannin A2の知覚神経上における認識機構を検証することで消化管センシングによる中枢への刺激が全身性作用がホメオダイナミクスに寄与することを証明することを目的とした。1.Cinnamtannin A2応答神経細胞の可視化:Ca2+バイオセンサーであるYC3.60tgマウスの脊髄後根神経節の初代培養系にcapsaicinまたはcinnamtannin A2を添加したところ、顕著なCa2+の取り込みが確認された。2.Cinnamtannin A2の視床下部ストレス応答遺伝子発現の検証 マウスにCinnamtannin Aを10・50μg/kg強制経口投与し、投与前、経口投与後経時的に全脳を摘出し、8μmの凍結コロナル切片を作成し、cfosおよびCRHmRNA発現をin situ hybridization法法で観察したところ、視床下部室傍核において顕著な発現誘導が認められた。3.Cinnamtannin A2とcapsaicinとの作用強度の比較:ウレタン麻酔下でラットの胃部にカニューレを留置し、挙睾筋細動脈をプレパレーションし、capsaicin またはcinnamtannin A2 10 μg/kgを強制経口投与後、tail cuff法を用いて60分間の血圧・心拍数の変動を観察した。その結果、capsaicin またはcinnamtannin A2のいずれも一過的な血圧・心拍数の上昇作用を示した。Cinnamtannin A2の投与によってストレスホルモンであるCRHの顕著な発現が認められた。以上のことより、capsaicinとcinnamtannin A2は消化管に存在する感覚神経によって知覚されること、またその刺激が生体にストレッサーとして認識され、交感神経活動を介して末梢循環動態に変化をもたらすことがわかった。
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