研究課題/領域番号 |
16H03043
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
大池 秀明 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門 食品健康機能研究領域, 主任研究員 (30455307)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 老化 / 加齢性難聴 / マウス / 食品 |
研究実績の概要 |
これまでの研究から、乳酸菌H61株を長期間摂取させることでマウスの加齢性難聴の進行を抑制できることを明らかにしている。本年度は、H61株を含む8種類の乳酸菌株を利用し、加齢性難聴の進行抑制効果を指標として、それと相関する内耳の遺伝子発現を抽出することを目指した。乳酸菌H61株を摂取させた群では、想定通り加齢性難聴の抑制効果が認められたが、実験群全体で個体差が非常に大きく出てしまい、他の乳酸菌群に関しては、コントロール群を含めたいずれの群とも統計的有意差が認められなかった。そこで、乳酸菌の摂取ではなく、聴力を指標としたデータ分類に切り替えて、内耳の遺伝子発現との相関を解析することとした。聴力の良し悪しから選別した個体の内耳からRNAを抽出し、マイクロアレイ解析を実施したところ、聴力と相関して発現する遺伝子が100個程度抽出され、類似の先行研究からは明らかになっていないものも数十個含まれていた。その一部の遺伝子について、in situハイブリダイゼーション法により、内耳組織内での発現部位を解析したところ、内耳内の神経細胞で特異的に強く発現するものが複数認められた。発現パターンは遺伝子によって異なっており、ラセン神経に強く発現するものと前庭神経に強く発現するもの、また、両者ともに強く発現するものなどが存在した。現在、乳酸菌の摂取以外で加齢性難聴の進行を抑制する方法を利用し、上記の遺伝子発現が、こちらの系においても加齢性難聴の進行と相関しているのかを検証している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の想定よりもマウスの個体差が大きく、摂取した乳酸菌の種類の差よりも個体差の影響が大きく出てしまった。しかしながら、その個体差を利用することで、加齢性難聴の進行と相関する内耳の遺伝子発現を明らかにすることができ、当初計画と同レベルの研究進捗が得られた。現在、これらの遺伝子を利用して次の解析に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から、マウス加齢性難聴の進行を抑制する方法を複数見出している。本年度に抽出された遺伝子が、加齢性難聴の進行にとってどの程度普遍性を有するものであるかを検証することで、複数の方法の共通性や相違性が明らかとなり、加齢性難聴を理論的に抑制する方法論を明らかにしていけると考えている。
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