研究課題
平成28年度は申請者が構築した実験モデルを用い、食経験に起因する味嗜好性変化を生じる中枢の変化を検討した。成長期に強い甘味刺激を与えたマウスをモデルとして、食経験の有無により発現変動を示す分子種の同定を試みた。新規な味刺激を受容した際、広範にわたる遺伝子の発現変動が起こると予想される。また、発現変動する分子種を同定することは嗜好性変化のメカニズムを明らかにする上で有用なツールになると期待される。強い甘味刺激を経験したマウスが、再び甘味刺激を摂取した際に発現変動する遺伝子を脳の味覚関連領域においてマイクロアレイ法により網羅的に解析した。まず、感覚情報を伝達する際の中継点である視床と摂食中枢、満腹中枢として機能する視床下部を含む間脳をサンプリングし、味嗜好性変化に関与する分子種の同定を試みた。その結果、コントロールマウス群と甘味経験群で有意に発現変動する遺伝子は観察されなかった。この結果は食経験に起因する味嗜好性変化への間脳の関与は低いことを示唆する。続いて記憶や空間学習能力に関わる海馬サンプルを用いて、網羅的な解析を試みた。海馬では、有意に発現低下する遺伝子はほとんど観察されなかったが、有意に発現上昇する遺伝子が複数観察された。現在、機能分類を行い、これら遺伝子群にどのような機能を持つ分子が含まれているか検討を行っている。今後はこの解析で得られた分子を組織染色法により検出し、その局在を明らかにする予定である。
2: おおむね順調に進展している
初年度の計画に関しては上記研究実績の概要に記した通り、予定通り進展している。2年目についても順調に進むことが予想される。
これまでは単一の味質に着目して研究を進めた。本年度以降は複数の味質に焦点を当て、研究を進めていく。
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実験医学
巻: 35 ページ: 906-910
Neuroscience Letters
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1016/j.neulet.2017.03.046.
EBioMedicine
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10.1016/j.ebiom.2016.04.031