| 研究課題/領域番号 |
16H03050
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| 研究機関 | 北海道大学 |
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研究代表者 |
松王 政浩 北海道大学, 理学研究院, 教授 (60333499)
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| 研究分担者 |
島谷 健一郎 統計数理研究所, データ科学研究系, 准教授 (70332129)
森元 良太 北海道医療大学, 心理科学部, 講師 (70648500)
川本 思心 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (90593046)
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| 研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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| キーワード | 統計哲学 / 科学哲学 / ベイズ主義 / 頻度主義 / 尤度主義 |
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| 研究実績の概要 |
まず、本研究代表者と分担者を中心とする研究会（うち一回は合宿）を二回開催した。昨年までは統計学の基本的な立場の違いによる、哲学的論争を中心に整理し、教育カリキュラムにどのような形で含めるかを研究会で検討したが、今年度は統計学認識論のもう一つの基本的問題、「統計学と論理はどう関係するか」を議論の中心とした。具体的にはC. Howsonによる「一般の帰納的推論と哲学的ベイズ主義の関係」、R. Festaによる「（カルナップ流）帰納的推論とベイズ推定の関係」についての考察をもとに、ベイズ関連の統計学を帰納論理から展開する、またはその逆の可能性について検討を行い、部分的ながら前者の成立可能性について手がかりを得た。これは科学教育の一部として統計学認識論を教育する上で、一つの重要な切り口となる可能性がある。
また、研究代表者の松王は、分担者の川本らとともに、確率の哲学で有名なオーストラリア国立大学のアラン・ハイエク氏を招聘し、「条件付き確率」「非常に小さな確率」をめぐる一般向けのサイエンスカフェを北大博物館で開催した（北大文学研究科、北大CoSTEPと共催）。同氏との事前のやりとりや、当日のカフェ運営を通じて、確率・統計の哲学的議論をわかりやすく一般聴衆へ伝える方法について、同氏とともに様々な検討、模索を行った。
さらに今年度、統計哲学と諸科学の具体的な関係についても検討を行い、その成果の一部を公表、または公表予定である。松王は統計哲学と人工知能研究の関係について、特に統計的因果推論（ベイズネットワークにおけるモデル選択など）における哲学的考察の重要性を具体的な事例をもとに論じた（『科学哲学』50に掲載予定）。また、分担者の島谷、森元は、生態学を念頭に置いた統計分析の基礎理解（島谷はAICの、また森元はRCTの根本的理解）に関して考察し、日本生態学会大会ワークショップで発表した。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
統計学認識論についての、哲学的議論の整理、ならびに諸科学との関係調査のいずれについても、定例研究会や各自の分担研究を進める中で、ほぼ当初予定していたとおりに進んでおり、一部の成果は公表するに至っている。哲学的議論の整理については、ベイズ主義（ベイズ推定）、頻度主義、尤度主義の3つの立場の比較のみならず、特にベイズ主義（ベイズ推定）を中心に「論理」との関係にまで考察範囲を広げており（当初ここまで研究を展開することは考えていなかった）、統計学認識論の基礎的な部分の研究は大いにはかどっている状況である。
一方、当初予定していた統計学（統計哲学）教育の海外視察と、海外研究者招聘の二事業については、もともとこの順序でH29年度、H30年度にそれぞれ実施する予定であったが、招聘に関して候補者の一人であったアラン・ハイエク氏の来日都合がついたこともあり、こちらを先に実施することにした。招聘に関しても、教育カリキュラム構築という視点から、哲学者だけを聴衆ターゲットとせずに、広く一般に向けた講演会を企画したいと考えていたが、ハイエク氏がサイエンスカフェをこれまで複数回実施した経験があることから、形式として最も望ましい「サイエンスカフェ」の形で実施することができた。北大CoSTEPのカフェ運営協力により40名以上の参加者があり、統計哲学を教育的視点で展開する上で、一つの大きな手がかり（事前知識がない聴衆がどこで躓くか、など）を得ることができた。もちろん、一回の事業だけでは得られる知見に限界があるが、本研究の目指す教育カリキュラム構築という点では大きな前進である。
なお、分担者の島谷を中心に実施した日本生態学会でのワークショップも、たいへん「教育的意味がある」と評価され、学会誌での特集を組むことを提案されている。「諸科学との関係」に関する研究も、教育的側面でほぼ予定通りの進展が得られている。
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| 今後の研究の推進方策 |
今後は各議論の整理を引き続き行いながら、具体的な教育素材作り、先進的な教育例の視察、試行的な授業の実践を行い、最終的に教科書執筆、国際会議でのワークショップ開催を行う予定にしている。教育素材作りと授業実践については、北大CoSTEPで、受講生を対象とした「統計学認識論」講義を開講することについて部内会議で了承済であり（研究分担者の川本が部門長）、実践の場が確保されている。実施時期は後期（11月頃）を考えており、9月（定例の合宿時期）を目処にそれぞれ分担して教育素材を開発する予定である。
海外教育事例の視察は、H29年度のサイエンスカフェ実施で研究協力体制ができた、オーストラリア国立大学のアラン・ハイエクに引き続き協力を依頼し、同大での講義を複数回にわたって視察、また授業後のディスカッションの実施を行いたいと考えている。実施時期は、これも後期を予定している。
その後の教科書執筆、国際会議でのワークショップ開催は、これらの成果を踏まえて行うことになるが、いずれも本研究の最終年度であるH31年度に実施する。教科書はH30年度中に、本研究に興味を示している複数の出版社に具体的な執筆計画を示し、出版の話を進めたい。また国際会議については、2019年にチェコで開催予定のCLMPS（世界科学哲学会議）でワークショップを開催する予定で、ワークショップの登壇者の一人として、E. ソーバーを考えている。もしソーバーの都合がつかなければ、ソーバーに依頼して他の適任者を紹介してもらう。またワークショップは公募のため、応募数が多い場合は採択されない可能性もある（結果はH30年度中にわかる）。その場合は、（個人発表ではCLMPSで研究成果を報告するが）別途日本での国際会議（海外から基調講演者を招聘し、本研究成果を発表するとともに、関連のパネルディスカッションを実施）に切り替える。
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