研究課題/領域番号 |
16H03053
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
杉田 克生 千葉大学, 教育学部, 教授 (40211304)
|
研究分担者 |
加藤 徹也 千葉大学, 教育学部, 教授 (00224519)
山下 修一 千葉大学, 教育学部, 教授 (10272296)
野村 純 千葉大学, 教育学部, 教授 (30252886)
神田 玲子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線防護情報統合センター, センター長(定常) (40250120)
喜多 和子 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (80302545)
佐藤 泰憲 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (90536723)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 放射線教育 / レギュラトリーサイエンス / 教材開発 / 教員養成 |
研究実績の概要 |
放射線の生体影響を学校でレギュラトリーサイエンスの観点から理解させるため、参加型学習プログラムを開発するとともにプログラム担当教員の指導能力向上を図った。紫外線を含め放射線の生体影響を児童に理解させるため、理科教育、技術教育専門家が放射線生物研究者と協働して実験講座を開催した(サイエンススタジオCHIBA「基礎力養成講座」や、ひらめき☆ときめきサイエンス「放射線博士になろう!~放射線の飛んだ跡やDNAの傷を見てみよう~」。この講座を通じ、放射線による癌化や奇形など複雑な生体影響や確率的リスクの理解を高めるため臨床事例を取り入れた学習教材を作成した。またヒト由来がん細胞を用いた染色体異常実験を学校で可能にする教材を開発した。 一方、高等学校物理担当の現職教員や理科教育専攻学生が学習プログラム作成者との意見交換を通して、生体影響を環境との相互作用から指導できる理科教員の養成を目指した。また海外での放射線リスク教育の現状調査のため英国を訪問した。ロンドン大学教育研究所のProf. Reissと協議し、レギュラトリーサイエンスの観点から日本版の放射線リスク教育教材を作成した。さらにレントゲンが生誕したレンネップのレントゲン博物館やX線を発見したヴュルツブルク大学物理学研究所を訪問し、科学史的資料を収集するとともに学習教材を作成した。また教育現場で活用できる放放射線実験のために作成してきた「学校での放射線リスク教育ガイドブック」を改訂した。千葉大学でのdoiも登録し、web上(http://doi.org/10.20776/B9784903328225)で誰でも閲覧可能な教材とし、 国内での普及を図った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね1年間の計画通りに実施した。中高生対象の放射線実験講座も、「ひらめきときめき実験講座」や「基礎力育成講座」などを通して、放射線の計測、人体影響などを実習してもらっている。前年度までの科学研究「放射線教育を軸としたESD推進のための学習プログラム開発と理科教員養成」の結果、中高生向けの「学校での放射線リスク教育ガイドブック」を作成したが、新たな教材も加えて改訂し、これを用いた実験講座を開催している。
|
今後の研究の推進方策 |
放射線生体影響を知る実験講座は教育的には有用な方法であり、日本での理科教員ならびに医療従事者への活用を図るため、今後全国的な普及をはかる。特に今年度改訂した中高生向けの「学校での放射線リスク教育ガイドブック」を活用し、これを用いた実験講座を開催するとともに、現場の教員にも参加してもらいさらなるガイドブックの改善を図る。その一環として、科学教育面では日本理科教育学会・日本科学教育学会、放射線基礎生物学では日本放射線影響学会や日本小児科学会などでこの教育プログラムの成果を発表し、それぞれの専門家の意見を仰ぐ。またロンドン大学教育研究所の科学教育担当のProf. ReissやDr. Levinsonらとも定期的に意見交換し、学校で実施可能な放射線教育プログラムを完成させる。その後教育プログラム実施を研究チーム内で行い、中学・高等学校での教育プログラムとして普及を図る。普及手段のひとつとして、従来研究代表者らが行ってきた出張授業の中でそのエッセンスを取り入れる。また「次世代才能スキップアップ」講座で実施したレギュラトリーサイエンス教育プログラムの実験状況などをビデオで供覧し、インターネットを介した遠隔教育としても活用を図る。 一方、「不確実性がある中でリスク評価を行う手段としてレギュラトリーサイエンスがある」ことを再認識し、従来の科学教育を補完させる教育方法としてのレギュラトリーサイエンスを放射線教育を通じて推進する。生体への毒性や暴露を想定、予測、推定に基づくことでリスク評価が可能な能力開発をすすめる。不確実性の中で、“透明性のある適正な仮定”としての不確実性係数など“透明性のある適正な仮定”を利用することで許容基準を設定する評価手法も教育プログラムに導入する。
|