研究課題/領域番号 |
16H03075
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
溝上 慎一 京都大学, 高等教育研究開発推進センター, 教授 (00283656)
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研究分担者 |
森 朋子 関西大学, 教育推進部, 教授 (50397767)
三保 紀裕 京都学園大学, 経済経営学部, 准教授 (80604743)
本田 周二 大妻女子大学, 人間関係学部, 講師 (00599706)
山田 邦雅 北海道大学, 高等教育推進機構, 准教授 (30399802)
長澤 多代 三重大学, 地域人材教育開発機構, 准教授 (30346944)
山田 嘉徳 大阪産業大学, 全学教育機構, 講師 (60743169)
紺田 広明 関西大学, 教育推進部, 研究員 (60734077)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アクティブラーニング / 学習成果 / 予習 / 主体性 / 授業外学習 |
研究実績の概要 |
アクティブラーニング型授業の理論や戦略的技法、評価法については、理論的・実践的にずいぶん整理されてきている。このことをふまえて、本研究では以下の課題に取り組んできた。(1)アクティブラーニング外化尺度の開発(溝上慎一・三保紀裕・紺田広明) (2) プレ・ポスト調査から見たアクティブラーニング型授業の教育効果の検討(森朋子・本田周二・三保紀裕・紺田広明) (3) アクティブラーニング型授業を実施する教員インタビュー(森朋子・山田嘉徳) (4) グループ学習におけるフリーライダーの弁別(山田邦雅) (5) アクティブラーニング型授業における教室外学修の実態(長澤多代) (1)については、溝上ほか(2016)で刊行された。一般的にはアクティブラーニング型授業の効果は、クラス全体の成績平均、記憶定着率の上昇、学習意欲、深い学習へのアプローチの高まり等を指標として、伝統的な講義型授業に比べて、あるいは授業開始期(プレ)と終了期(ポスト)とを比較して検討がなされてきた。しかしながら、これらの指標を用いての差異や変化は、アクティブラーニング型授業をおこなわなくても示せるものであり、決定的なアクティブラーニング型授業の効果検証にならない。アクティブラーニング外化尺度はこのような問題意識のもと開発されたものである。 (2)について、マルチレベルSEMにより、個人単位での教育効果のみならず、授業単位においてもアクティブラーニング型授業の教育効果が示された。成果は、紺田ほか(2017)で刊行された。個別の授業単位で見ると、多様なアクティブラーニング型授業のあることがわかるが、平均をすると、教育効果があるという結果である。これをもって、アクティブラーニング型授業の教育効果は認められると結論づけている。なお、アクティブラーニング外化に“予習の仕方”が影響を及ぼしていることも明らかにされている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年は、以下の4つの取り組みをチームでそれぞれおこない、研究を発展させた。順調にプロジェクトを進めてきていると考えている。*冒頭の番号は、上記の課題に対応する。(2) 三保紀裕ほか「プレ・ポスト調査からみたアクティブラーニング-3年間の調査結果のまとめ」 (3) 山田嘉徳ほか「アクティブラーニング効果に寄与する要員の質的検討-アクティブラーニング型授業を展開する教員へのインタビュー調査から-」 (4) 山田邦雅「グループ学習におけるフリーライダー弁別と他者への影響」 (5) 長澤多代「アクティブラーニング型授業における教室外学修の実態-山口大学におけるアクションリサーチをもとに」 本課題研究では、上述した5つの課題以外にもう一つ、中期的な教育効果測定(同一個人を2年後に縦断調査で追跡するもの)に取り組む予定であったが、残念ながら実施することができなかった。時間と労力の問題もあったが、それよりも、単なる一授業で成果を見せた学生を、縦断的に追跡することの理論的な意味が検討不十分なままであり、そのことがとくに問題だと考えられた。今後の課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、溝上(代表)を総括として、アクティブラーニング型授業の調査、並びに授業者、受講学生を対象とした面接をおこない、最後研究の総まとめを理論的におこない(溝上)、アクティブラーニング型授業の実証的研究、理論的発展に資するものである。 昨年立てた研究課題(下記)は予定通り修了している。(1)全国の約60~80のアクティブラーニング型授業におけるプレ・ポスト質問紙調査の実施並びに分析(溝上、森、三保、本田、山田嘉、紺田) (2)フリーライダーを防止する主体率の指標開発(山田邦) (3)授業参与観察、授業者への事後面接(森、山田嘉) (4)フォトボイスを用いたAL型授業における授業外学習の行動分析(長澤) 最終年度としての本年は、以上の検討課題で残っている、(1)のデータを用いた習得型・探究型のアクティブラーニング型授業の効果検証と、過去3年の成果をふまえた理論的考察をおこなう予定である。
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