研究課題/領域番号 |
16H03076
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
竹蓋 順子 千葉大学, 国際未来教育基幹, 准教授 (00352740)
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研究分担者 |
土肥 充 千葉大学, 国際教養学部, 准教授 (00323428)
高橋 秀夫 千葉大学, 国際教養学部, 教授 (30226873)
与那覇 信恵 文京学院大学, 外国語学部, 准教授 (30522198)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 語彙力診断テスト開発のための基礎研究 / 発表語彙学習システムの開発 |
研究実績の概要 |
平成30年度は2つの研究を遂行した。一つ目は、語彙学習を動機づける語彙力診断テスト開発のための基礎研究であり、具体的には、語彙力診断テストの実用性と受験後の学習へのプラスの波及効果を重視して語彙テストを選定する場合、どういった形式のテストが相応しいかを検討し、それを使用する際の留意点を観察することを目的とした研究である。テスト形式は、目標語を受験者に提示し、それらの語彙を知っているかどうかを答えさせるYes/No形式(Form A)、目標語の日本語訳を4つの選択肢から選ばせる形式(Form B)、文脈を与え、目標語のスペリングの一部を提示して目標語を記入させる形式(Form C)の3種であった。データを分析した結果、1)Form Aは実用性が高く、受験者にも好意的に受け入れられたが、低頻度語彙になるほど、「知っていると思っても実際には運用レベルに至っていない」語が多い傾向にあるため、慎重な解釈が必要とされること、2)Form CとTOEICスコアの間には高い相関関係があるため、テスト項目の作成や実施に時間がかかり実用性は低いもののプラスの波及効果を生み出せる可能性があること、などがわかった。 二つ目は、英語のスピーキング技能を向上させられるアプリの開発である。学習システムは8ステップで構成されている。最初の学習ステップでは日本語の音声で会話を提示することで、学習者の興味を引きつけ、既習の知識を呼び出した後、学習者が学びたい英語表現を選定し、それらが適切な場面で発話できるように学習できる流れとなっている。このシステムは、音声データ、テキスト等を用意すれば、コンテンツを入れ替えられる仕組みになっているため、学習者のニーズや熟達度レベルに合わせることができ、幅広い学習者を対象として高い学習効果が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、平成29年度から4年間で英語語彙力診断システムと発表語彙学習システムを開発する計画である。当初の計画では、初年度である平成29年度に英語語彙力診断システムのプロトタイプを開発し、平成30年度は、そのプロトタイプを試用し、改修すべき内容を吟味し、システムを完成に近づけることと並行して、発表語彙学習システムのプロトタイプを開発する。さらに、平成31年度にそのプロトタイプを試用し、改修すべき内容を吟味し、最終年度には両システムの効果検証を継続した上で一般公開する、という流れで考えていた。 この中で、平成30年度は、予定通り、発表語彙学習システムについて、教育関連の学術論文、既存の語彙力診断テストおよび語彙力養成用ソフトウェアやアプリから、学ぶべき事柄を収集した上で、既に開発されているシステムも含めて評価を行い、学習効果及び効率をさらに高めることを目指し、実装すべき機能やインタフェースについて吟味、策定し、発表語彙学習システムのプロトタイプを開発したため、本研究はおおむね順調に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、英語語彙力診断システムの開発と、発表語彙学習システムの開発という2本の柱から成る。 今後は、語彙力診断システムについては、今後プロトタイプシステムを研究代表者や研究分担者が所属する大学で試用することで、システムの妥当性、信頼性を検証すると共に、学習者と教師にとって、さらにユーザーフレンドリーなインタフェースとなるようシステムを改修する。また、診断システムの診断結果の提示方法を検討する材料とするため、市販のテスト作成システムを利用して、語彙のサイズだけでなく、深さ、速さを測定するテストを作成する。これと並行して、管理者モードの実装、テスト項目の入れ替え権限の実装、診断レポートの表示ロジックと表示方法の改修などを行う。 次に、発表語彙学習システムについては、試用を開始するのと並行して、主に次の改修を行う。 (1)管理機能において、学習ログの出力機能を追加する、(2)音声再生エンジンを書き換え、タブレット型の端末で、よりスムーズに音声再生できるように改修する、(3)素材が2人の会話ではなく、モノローグである場合または3名以上による発話の場合にも対応できるように改修する、などである。これらの改修についての仕様を策定し、システムを改修した上で、繰り返し実験的に試用することでシステムを完成に近づけていく予定である。
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