研究課題/領域番号 |
16H03086
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
赤倉 貴子 東京理科大学, 工学部情報工学科, 教授 (80212398)
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研究分担者 |
古田 壮宏 奈良教育大学, 教育連携講座, 准教授 (60453825)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 教授学習支援システム / eテスティング / アイテムバンク / 授業評価 / システム開発 |
研究実績の概要 |
平成28年度に数題の授業評価項目から多数の授業評価項目の回答結果を推定できるモデルを「階層型アイテムバンク」と呼称し、その基礎を作成し、授業改善支援システムを試作したので、平成29年度は、これを用いて授業評価アンケート項目の適応的な出題方法について検討した。 (1)まず、毎回の授業で行なうアンケートを想定し、一回前の授業の収集データから推定した結果を用い、項目を出題する方法についてシミュレーション実験を行った。その結果、一回前の推定結果を逐次反映する方法が推定精度として良い傾向であることがわかった。 (2)次に、項目間の抽象度を定め、構造学習をしたモデルの推定精度をシミュレーションにより示した。 (3)さらに、毎回の授業の評価値の推移を教員にフィードバックする機能について検討した。個々の受講者が回答した項目数は7項目でありながら、階層型アイテムバンクにある72項目全てについて推定可能であり、毎回実施しているため、その推移をフィードバック可能であることを示した。 (1)~(3)により、階層型アイテムバンクの推定モデルを利用した授業改善支援システムの開発ができ、少ない項目でもより多くの項目を推定して、授業改善に役立てられることを示した。しかしながら、講義内容及び講義進捗に適応した授業評価項目の出題までには至っていない。そこで、平成30年度は、講義のシラバスを利用したテキストマイニングを行い、トピック解析等のテキスト処理を行い、その解析結果と授業評価項目の関係を検討することにし、平成29年度の最後には、講義シラバスの抽出を行って、平成30年度の分析の準備を行った。 平成29年度は、査読あり国際学会プロシーティングス1報、査読なし論文2報、国際学会発表2報、国内学会発表4報を研究成果として発表した。さらに平成30年度公開で査読あり論文2報が既に採択されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成30年度の途中にシステムの基本を完成させることを目指していたが、平成28、29年度でシステムの基本は完成できた。そのシステムでは、少ない授業評価項目で、より多くの評価項目を推定してフィードバックできるようになった。まだ講義内容及び講義進捗に応じた項目を出題できるようにはなっていないが、基本システムができたので、今後は、講義内容及び講義進捗に適応した授業評価項目の出題を目指す。平成30年度中にはそれができるようになると考えられ、さらにその後には、当初予定していなかった大規模な評価実験につなげられそうであるから。
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今後の研究の推進方策 |
(1)「講義内容」に適応した「授業評価項目」を出題できるようにするため、講義内容の分析を進める。大学の講義シラバスについて、各回の講義内容(実施事項)、教科書、評価方法、履修の注意等を含む全テキストを取得し、これのトピック解析を行う。これによって、各講義のトピックを抽出し、講義の特徴を見つけ出す。講義形式、演習形式、実験形式ごとの違いも分析する。 (2)(1)の結果を、平成29年度までに開発した授業評価支援システムに反映させる。現在のシステムは多層レイヤ型のアイテムバンクが搭載できており、少ない評価項目で、より多くの項目の評価結果を推定できるようになっている。しかし、「講義内容」に応じて適応的に「授業評価項目」を出題できるようにはなっていない。そこで、(1)の結果から講義に適応したトピックを持つ授業評価項目群を抽出できるようにし、その項目群の中でより多くの項目を推定できる項目を出題できるようにする。 研究の最終目標としては、アイテムバンク、講義シラバス、講義映像を用いて、自動的に適応的な出題項目群を生成できるシステムであるが、その大きな柱となるのが「(A)多層レイヤ型アイテムバンク」、「(B)講義内容及び講義進捗に適応した授業評価項目群の選択」、「(C)(B)をより少ない項目でできるような項目推定」である。平成30年度は上記(1)(2)を実施して、(B)の完成を目指し、平成31年度(最終年度)の大規模評価実験につなげていく。
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